2020 Fiscal Year Annual Research Report
新たなTTX保有生物の発見およびTTX獲得機構の解明
Project/Area Number |
20J20428
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
尾山 輝 日本大学, 生物資源科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | テトロドトキシン / オオツノヒラムシ / 毒化機構 / 毒保有魚 / 温暖化 |
Outline of Annual Research Achievements |
所属研究室では、クサフグが生涯を通して、高濃度のフグ毒を保有するオオツノヒラムシを捕食することで効率的にフグ毒を蓄積していることを明らかにしており、オオツノヒラムシがフグ毒保有魚のフグ毒供給源の一つであると考えられる。一方で、ヒラムシ類の分類の詳細については不明な点が多く残されている。本研究では、神奈川県葉山町沿岸で採取したヒラムシ類のフグ毒保有の有無および系統関係を明らかにした。 分子系統解析を行うため、28S rRNA遺伝子の部分配列を増幅し、塩基配列を決定し系統樹を構築した。これに加え、LC-MS/MS分析によりTTXの有無を明らかにし、系統との関係を調べた。その結果、無吸盤亜目におけるTTXを保有するグループは、オオツノヒラムシやツノヒラムシを含むツノヒラムシ属の特定の系統だけであった。また、無吸盤亜目のツノヒラムシ属のみがフグ毒を有するとされてきたが、吸盤亜目で初めてミスジホソヒラムシがTTXを有することを明らかにした。これらの結果は、ヒラムシ類におけるTTX保有の有無が無吸盤亜目の限られた系統だけでなく吸盤亜目にも広く存在する可能性を示唆している。 日本列島南方海域に生息するフグ毒保有魚であるオキナワフグおよびツムギハゼとそれらの毒化に関与すると考えられるオオツノヒラムシとの関係に着目し研究を行った。 オオツノヒラムシを特異的に検出可能なPCRにより、沖縄本島、石垣島および西表島で採捕されたオキナワフグおよびツムギハゼの稚魚の消化管内容物について調べたところ、すべての海域の試料から特異的なバンドが検出され、オオツノヒラムシのCOI遺伝子の当該配列と一致した。これらの結果から、フグ毒保有魚の稚魚期にはオオツノヒラムシを捕食し、その毒を蓄積することで毒化していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ感染症の影響を受けて、本研究の遂行に必要な試料採取を実施することができなかった。しかしながら、過去に採取した試料の未解析分を用いて研究を進め、フグ類だけでなくツムギハゼの毒化にオオツノヒラムシが関与することを明らかにできた。今後は、他のフグ毒保有生物とオオツノヒラムシの関係についても研究を進める足がかりを得たと考えている。また、無吸盤亜目ツノヒラムシ属の限られた種のみがフグ毒を保有していると考えていたが、本研究を行う中で吸盤亜目のミスジホソヒラムシから高濃度のフグ毒が検出された。無吸盤亜目ツノヒラムシ属に限らず吸盤亜目のミスジホソヒラムシに近縁な種についても分析を進めるきっかけになると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
フグ類だけでなくツムギハゼの毒化にオオツノヒラムシが関与することが示唆された。このことから、広範なフグ毒保有生物の毒化にオオツノヒラムシが関与していると考えられる。また、新たにフグ毒を保有するヒラムシが発見されたことも踏まえると、海洋環境中におけるオオツノヒラムシを含むヒラムシ類はフグ毒保有生物の毒化機構において重要な地位にいると考えられる。今後は当初の計画に加え、フグ毒の主要な供給源の一つと考えられるオオツノヒラムシの生態についても研究を進めていく予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] The planocerid flatworm is a main supplier of toxin to tetrodotoxin-bearing fish juveniles2020
Author(s)
Shiro Itoi, Tatsunori Sato, Mitsuki Takei, Riko Yamada, Ryuya Ogata, Hikaru Oyama, Shun Teranishi, Ayano Kishiki, Takenori Wada, Kaede Noguchi, Misato Abe, Taiki Okabe, Hiroyuki Akagi, Maho Kashitani, Rei Suo, Tomoko Koito, Tomohiro Takatani, Osamu Arakawa, Haruo Sugita
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Journal Title
Chemosphere
Volume: 249
Pages: 126217-126217
DOI
Peer Reviewed
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