2020 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidating the Molecular Mechanisms behind the Diverse Behavior of the Stomatal Meristemoid
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20J20446
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
ドル 有生 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 気孔 / 水草 / エボデボ / evo-devo / 進化 / 幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の気孔の発生様式は、分類群ごとに驚くべき多様性を見せる。しかしながら、その多様性が生まれる仕組みはこれまで不明であった。本研究ではその多様な発生様式の進化のモデルとして、オオバコ科アワゴケ属内において気孔の分裂と分化に見られる2つの多様性に注目し、そのそれぞれの分子基盤と進化の過程を解明することを目的としている。 そのうち分裂の多様性は、アワゴケ属の陸生種では気孔幹細胞が複数回分裂してから気孔になるのに対し、水中と陸上の両方で生育できる両生種では、その分裂をスキップし直接気孔が作られる、というものである。本年度はこの多様性について、各種を対象にした詳細な発生過程の観察、および遺伝子発現解析を完了した。その結果、気孔発生の鍵転写因子、SPEECHLESSとMUTEのはたらきの時間的パターンに各種で違いがあるという、かねてから設定していた仮説が支持された。本年度はこれらの結果をまとめて論文として投稿し、審査を経てPNAS誌で発表することができた(Doll et al., 2021)。 もう一方の多様性、すなわち、アワゴケ属の両生種のみが、水中に沈んだ時に気孔の発生を抑制できる仕組みについても、解析を進めた。気孔発生やその抑制に関わる因子を探すためのRNA-Seq解析がおおむね完了し、いくつかの候補因子を選び出すことができた。その候補因子の一部については、すでに気孔系譜細胞で発現することをin situハイブリダイゼーションによって確認した。並行して、アワゴケ属のSPEECHLESS、MUTEタンパク質の機能を調べるために、モデル植物シロイヌナズナにそれらの遺伝子を導入する実験を進め、形質転換体を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
分裂多様性の分子基盤を調べる実験が順調に進み、その結果を当初の計画よりも早く論文としてまとめ、公表することができた。次の段階であるこの多様性の進化過程を探る解析を、計画を前倒ししてすでに開始できており、きわめて順調に研究が進展しているといえる。分化にみられる多様性については、各種遺伝子導入実験が新型コロナウイルス感染症の流行による入構制限の影響を受けて一部遅れたものの、今後の解析に必要な形質転換体はすでにほぼ得られている。また、RNA-Seq解析が計画通りに進み、候補因子の同定が進んでいる。総合的にみて本研究は当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
気孔幹細胞の分裂様式にみられる多様性の進化過程を解明するための解析を進める。具体的には例えば、シロイヌナズナにおいて陸生種アワゴケの遺伝子を導入した形質転換体を現在作出中である。今後、すでに作出している、両生種ミズハコベの遺伝子を導入した形質転換体との比較解析を行なう予定である。 また、両生種の水中における気孔分化抑制については、RNA-seqによって同定された候補因子についてin situハイブリダイゼーションなどの解析を進め、気孔系譜特異的に発現する因子の絞り込みを進める。そして絞り込んだ因子の発現パターンや配列を、陸生種のそれと比較する。興味深い因子が得られれば、さらにその因子の機能解析も、ミズハコベやシロイヌナズナへの遺伝子導入によって進める予定である。
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Research Products
(6 results)