2021 Fiscal Year Annual Research Report
CuSCN/有機色素ハイブリッド薄膜の自己組織化電析と次世代デバイスへの展開
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20J20455
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
宇田 恭太 山形大学, 大学院理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 電解析出法 / 無機/有機ハイブリッド材料 / 発光素子 / ダイオード |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究の目的は、デバイスへの応用をより確実なものにするためにCuSCNの物理的性質のコントロールが可能な範囲を模索し、ハイブリッドEL素子として機能させる事である。また、電解析出法によって作製したCuSCNはEL素子のホール輸送層として機能することが明らかになったが、表面のラフネスが粗いためにショートしてしまうといった課題があった。この課題を解決し、発光素子への応用が可能なのかを明らかにすることである。 これを踏まえ、研究成果は以下の通りである。 電解析出法で製膜したCuSCN薄膜は、製膜時の浴組成を変化させることで結晶配向を基板に対し平行から垂直へと90度大きく変化できる。結晶構造に応じ、Cu過剰ではヘイズ率が小さいのに対し、SCN過剰の条件では、80~90%と高い値を示すが、これらは電解析出の時間を短くすることで、より透過性のコントロールも可能となる。これは光指向性を制御できることを意味している。得られたCuSCN薄膜は、すべて約3.6eVのほぼ同じエネルギーギャップを示しているのに対し、浴組成を調整することで仕事関数を5.26から5.66eVの範囲コントロールでき、それはダイオードの注入障壁にも現れた。Cu過剰な条件ではホールの注入障壁が低いのに対し、SCN過剰ではITOからホールを注入するためにより多くの電圧を必要となった。すなわち、高い整流性を示すだけでなく、浴組成を変化させることでJ-V特性を制御できる。 さらに、課題となっていた表面のラフネスは、これまでの物理的性質のコントロールに加え平滑層を挟むといった工夫によってラフネスの抑制につながり有機ELとして機能した。 電析時の浴組成を変化させること様々な範囲で物理特性やデバイスの駆動電圧のコントロールが可能となり、電析CuSCNは表面をコーティングすることで発光素子として動作することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の進捗状況は、おおむね順調に進展している。理由及び具体的な研究の成果は以下の通りである。 前年度については、簡易的な実験のために電解析出法によるCuSCNの物理的性質の制御がどの程度できるのか、実際のIVL測定といったデバイスの機能測定については明らかでなかった。 しかし、上記に示したように浴組成をコントロールするだけで、薄膜の結晶形態やその結晶配向の制御に加え、透過率やヘイズ率などの光の指向性、さらにバンドギャップはそのままにCuSCNの仕事関数を約0.4eVの範囲でコントロールできることが明らかになった。また、無機/有機ハイブリッドELについても、表面のラフネスが粗いことが課題であったが、物理的性質のコントロールに加え平滑層を挟む事でデバイスとして駆動することが分かった。 IVL測定の結果、塗布法で製膜したCuSCN薄膜と比較しても、デバイスが発光を始めるターンオン電圧については電析膜の方が優位的であった。電流が流れすぎてしまうといった課題はあるものの電解析出法が発光素子へ応用できることが本研究で明らかになった。 現在は新たな応用先としてペロブスカイト太陽電池への研究も進めることができている。こちらについては、電析膜の導電性の良さを活かすことが可能であると考えており、現状CuSCN上にペロブスカイト層が製膜できる事を確認している。 さらに、上記の内容で国際学会発表や論文も執筆中であることから総合的に判断し、研究活動についておおむね順調に研究が進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度として電解析出法で製膜したCuSCNのデバイスへの応用に2つの方向性でこれを展開する。一つは更なるCuSCNの物理的性質のコントロールのバリエーションを増やし、無機/有機ハイブリッドEL素子の作製に取り組むことである。デバイス作製時に材料に合わせた条件でCuSCNの製膜が可能であるため、高性能化を果たすと同時にその安定性や表面のラフネスのコントロールが課題であり、前年度に見出された複数の条件についての最適化、さらにはすべて溶液プロセスでデバイス作製に取り組むことでこれを果たす。これまで電解析出法は有機ELへの応用は不向きとされてきたが、この研究を通じ電解析出法を一つの選択肢にしたい。 もう一つの方向性は、電解析出法を用いたCuSCN薄膜のペロブスカイト太陽電池への応用である。電解析出法はその製膜方法から導電パスを形成するため導電性の高い薄膜を作製できると考えている。その性質を利用し高効率ペロブスカイト太陽電池の作製に取り組む。現時点では、CuSCN上にペロブスカイト層を製膜することは、可能だが表面の濡れ性などの影響で被覆できずショートしてしまうといった課題がある。こちらについても薄膜の物理的性質のコントロールに加え、私がこれまで行ってきた有機色素による構造制御を行うことで表面の形態など制御によってこれらの課題を解決していきたい。 物理的性質のコントロールの中でも仕事関数のコントロールが可能になったというのが大きな発見であり、実際にダイオードの作製に取り組んだところ、仕事関数と立ち上がり電流に相関関係がみられた。無機/有機ハイブリッドELやペロブスカイト太陽電池の駆動電圧のコントロールの可能性が示唆されるためデバイス応用に大きな期待ができると考えている。 また上記の研究成果については国内外の学会や論文等で公表する。
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Research Products
(3 results)