2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of functional ionic liquids for the highly effective membrane separation of critical metals
Project/Area Number |
20J20464
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
花田 隆文 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | レアメタル / 膜分離 / イオン液体 / 深共晶溶媒 / 溶媒抽出 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代産業に必要不可欠なレアメタルは、レアメタル鉱石から溶媒抽出法などの湿式製錬技術により生産される。近年では持続可能な開発の観点から、レアメタルを含む製品の廃棄物からのリサイクルによるレアメタルの再資源化も注目されている。これら“都市鉱山”には微量のレアメタルとともに多量の不純物金属が含まれている。溶媒抽出法は目的金属だけを選択的かつ迅速に回収することができる一方、有機溶媒を多量に使用することによる環境負荷が懸念されている。本研究では、有機溶媒を使用することなく高効率かつ選択的なレアメタル分離を達成する新規分離媒体を創製し、レアメタル1次資源や廃棄物からのレアメタルリサイクルに応用することを目的する。2020年度は①新規イオン液体によるロジウムの選択的膜分離システムの開発、および②リチウムの選択的分離を可能とする深共晶溶媒の開発、についての研究を行った。 ①に関して、新規イオン液体を組み込んだ高分子膜を新規に創製し、不純物金属である鉄との混合溶液からロジウムのみの選択的な膜輸送を可能にする膜分離システムを構築した。本成果を筆頭著者として論文を投稿し、ACS Omega誌に掲載され、さらには表紙として採用された。 ②に関して、イオン液体の物性や価格などの課題を克服した新たな分離媒体として深共晶溶媒に着目し、協同抽出剤からなる深共晶溶媒を新規に開発した。この深共晶溶媒を塩湖かん水からのリチウムの選択的な液液抽出システムに応用した。本成果を筆頭著者として論文にまとめ、ACS Sustainable Chemistry & Engineering誌に掲載され、さらには表紙として採用された。 以上の研究成果を国内学会5件で発表し、うち3件で優秀発表賞を受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2020年度は①新規イオン液体によるロジウムの選択的膜分離システムの開発、および②リチウムの選択的分離を可能とする深共晶溶媒の開発、についての研究を実施した。①に関しては当初の計画の通り、イオン液体を組み込んだレアメタル分離膜を新規に創製し、分離回収が困難な金属として知られているロジウムを不純物金属から選択的に膜輸送する膜分離システムに応用した。その成果を筆頭著者としてまとめ、論文を投稿した。 イオン液体がレアメタル分離媒体として優れた性質を示すことが明らかとなった一方、実用化にあたってはその物性や価格などの課題を解決する必要があった。我々は、これらイオン液体の課題を克服した新たな環境調和型の溶媒として深共晶溶媒に着目し、レアメタル分離へ応用するべく②の研究を実施した。協同抽出剤として知られる常温では固体のβジケトン型抽出剤および酸化ホスフィン型抽出剤を適当なモル比で混合することにより、常温で液体となる深共晶溶媒が得られることを見出し、分離回収が困難であるリチウムの液液抽出系に適用した。その結果、模擬塩湖かん水からのリチウムの選択的な抽出分離を達成し、筆頭著者として論文を投稿した。以上、新規イオン液体を組み込んだ高分子膜による膜分離システムへの展開、およびイオン液体の弱点を克服した新たな分離媒体の創製を達成したことから、当初の計画以上に研究が進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
我々はこれまでに、イオン液体の弱点を克服した環境調和型の新しい溶媒として注目されている深共晶溶媒に着目し、レアメタルの分離媒体としての利用を検討してきた。具体的には、金属イオンに対する特異的な配位能を有するβジケトン型、およびホスフィンオキシド型抽出剤を2種類混合することにより、常温で液体となる新しい深共晶溶媒を開発した。得られた深共晶溶媒は低粘性かつ水と不混和性であり、有機溶媒を用いない環境調和型の液液抽出システムに適用可能であった。 電子基板や電池などの廃棄物からレアメタルを分離する際には、まず浸出工程で硫酸などの無機酸により含有金属を水相に溶解したのち、液液抽出などの技術により目的金属のみを選択的に分離回収する。浸出工程は硫酸や塩酸といった無機酸を多量に消費するため、湿式精錬プロセスの中で最も環境負荷の大きな操作である。我々は深共晶溶媒の有する優れた金属配位能に基づき、廃棄物からのレアメタル浸出に応用することを着想した。これにより、環境負荷を低減した持続可能なレアメタルリサイクル技術を提案する。本年度は、優れた金属配位能を有する深共晶溶媒をリチウムイオン電池からのリチウムおよびコバルトの直接浸出に適用する。深共晶溶媒を構成する配位子の金属配位能が各金属の浸出挙動に及ぼす影響について、液液抽出系における各金属の抽出性能など観点から検討する。
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Research Products
(10 results)