2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20J20495
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
山栄 大樹 横浜国立大学, 理工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 可逆計算 / 超伝導回路 / 量子磁束パラメトロン / 断熱ロジック |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では、可逆量子磁束パラメトロン(AQFP)回路を用いた超低消費エネルギー計算機を効率的に設計するためのセルライブラリの構築と可逆回路における計算に不要なゴミ情報の消去に伴う消費エネルギーの数値計算による評価を行った。 可逆AQFP回路のセルライブラリの基本ゲートとなる3入力多数決論理ゲートと可逆AQFP回路の入力のうちの一つの論理を固定することで実現できる2入力ANDゲートを提案した。提案したセルライブラリの設計と試作を行い、低速測定で複数のチップにおいて正常動作を確認した。また、提案したセルライブラリを用いて可逆計算機の主要な要素回路である加算器とレジスタファイルを効率的に設計した。設計した回路の消費エネルギーを数値計算を用いて計算し、従来の不可逆AQFP回路を用いたものと比較して低消費エネルギーであることを示した。さらに、設計した回路の試作を行い、低速測定において正常動作を確認した。 可逆回路では計算に不要なゴミ情報が発生するが、計算が終わる際にゴミ情報を消去する必要がある。ゴミ情報消去に伴う消費エネルギーを数値計算により評価した結果、動作温度4.2 Kにおいておよそ40 yJ程度であり、可逆回路の計算に伴う消費エネルギーに対して非常に小さいことを示した。さらに可逆AQFP回路を用いたフリップフロップの有限温度における消費エネルギーを計算し、可逆AQFP回路を用いた可逆回路は消去したゴミ情報の数だけ消費エネルギーが必要であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
可逆AQFP回路を用いたセルライブラリについては、設計したセルライブラリの試作を行い、低速測定で複数のチップにおいて正常動作を確認した。また、セルライブラリを用いて加算器とレジスタファイルを効率的に設計し、低速測定で試作した回路の正常動作を確認した。以上のことから、提案したセルライブラリが大規模可逆回路を設計するためのビルディングブロックとして用いることが可能であることを示した。 可逆回路における計算に不要なゴミ情報の消去に伴う消費エネルギーの数値計算による評価については、可逆回路が計算に伴う消費エネルギーと比較して十分小さいことを示した。また、具体的な可逆回路としてフリップフロップを用いて有限温度での消費エネルギーを数値計算を用いて計算した結果、可逆回路の消費エネルギーはゴミ情報を消去した数で決まることを示した。 以上より、当初の研究計画以上に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
提案したセルライブラリを用いて、可逆AQFP回路を用いたマイクロプロセッサの設計と動作実証を目指す。また可逆AQFP回路単体の高速測定を行い、数GHzでの動作実証を目指す。必要に応じて可逆AQFP回路のパラメータ及びレイアウトの再検討を行い、設計に反映させる。さらなる大規模化・高機能化にむけたビット拡張の検討を行う。
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