2021 Fiscal Year Annual Research Report
次世代標的アイソトープ療法の開拓に向けたオージェ電子治療の効果検証
Project/Area Number |
20J20518
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
尾幡 穂乃香 北海道大学, 生命科学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | Auger電子 / Pt-191 / DNA / 核医学 / 白金 / 標的アイソトープ療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度に検討を行った[191Pt]cisplatin の課題であったDNA損傷誘導の効率を改善するために、2021年度は,細胞内取り込みやDNA結合を促進させる標的化分子を191Ptに導入することを構想した。これまで,n.c.a. (no-carrier-added)の白金RIは利用例がなく,標識方法も定まっていなかった。そこで,本研究で製造に成功したn.c.a.の白金RI (191Pt)を用いて,システイン(Cys)やカルボン酸系多座配位子(DTPA)を介した191Pt標識合成法を考案、DNA結合分子(Hoechst33258)の191Pt標識体を開発した。インビトロでの検討の結果、[191Pt]Pt-DTPA-Hoechst、[191Pt]Pt-Cys-Hoechstは、他のAuger電子放出候補核種である111Inの標識体([111In]In-DTPA-Hoechst)と比較して、DNA結合率が1桁高いことを見出した。また、DNA損傷修復タンパク質53BP1のイメージングの結果、特にDNAへの結合量が多かった[191Pt]Pt-Cys-Hoechstでは、多くのDNA損傷が引き起こされていることが示され、191PtがDNA結合性・障害性の点で優れていることが明らかにされた。以上より,白金RIに適した標識法の開発と共に,モデル錯体を用いた白金のDNA高親和性の実証を達成し,191Pt標識薬剤の製造や有用性に係るPOCが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り、DNAを標的とするオージェ電子放出白金化合物の開発を進めており,その生物評価からオージェ電子治療における適切な化合物設計やそのDNA障害性についての知見が得られ始めている。年度後半は,施設の火災により実験のチャンスの減少等はあったものの、代替施設での実験再開に向けた環境整備を懸命に行い,当該研究を中止することなく進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度達成した、標的分子に191Ptを標識して薬剤化する技術を用いて、より少ない放射能で効果的に細胞死を引き起こすための戦略について検討を行う。具体的には,がん細胞内で増幅している細胞の生存に関与する遺伝子を標的とする分子を利用する。神経芽腫などで増幅されるMYCN遺伝子に結合するPIポリアミド分子(PIP)を選択し、191Pt標識化合物(191Pt-PIP-MYCN)を開発する。さらに化合物をインビボで利用することを見据え、腫瘍標的化分子の標識体を開発し、体内分布の評価を行う。
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Research Products
(7 results)