2021 Fiscal Year Annual Research Report
核媒質中のK中間子とカイラル対称性の部分的回復におけるストレンジネスの役割
Project/Area Number |
20J20598
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
飯澤 優太朗 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
|
Keywords | ハドロン物理 / カイラル対称性 / ストレンジネス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、核媒質中のK中間子からストレンジクォーク凝縮に関する情報を抽出し、カイラル対称性の部分的回復におけるストレンジネスの役割を調べることを目的としている。 本年度の研究実績は、K^-d→πΛN過程を用いた荷電対称性の破れについての研究及び核媒質中のストレンジクォーク凝縮の振る舞いの研究で進展があった。 1. 昨年度に引き続きK^-d→πΛN過程を用いた荷電対称性の破れについての研究を行った。K^-d→π-Λp過程とK^-d→π0Λn過程の断面積の比を取ることによってΛpとΛnの散乱長の違いを定性的に引き出すことができる可能性を見出した。今年度はK^-d→πΛN過程の散乱振幅の構成要素である基礎的な反応の散乱振幅を修正し、計算結果をより適切なものに更新した。また、K^-d→π-Λp過程について我々の計算結果と過去の実験との比較を行い、我々の手法の妥当性を議論することができた。本研究は実験研究者との共同研究であり、メール及びzoomで議論を行った。上記の研究成果については日本物理学会2021年度秋季大会及び東北大ELPH研究会C031において口頭発表を行った。また学術論文としてまとめ、学術雑誌に現在投稿中である。 2.核媒質中でのカイラル摂動論をSU(3)に拡張し、核媒質中でのストレンジクォーク凝縮を原子核密度の1次まで得た。これに含まれる低エネルギー定数について、カイラル摂動論を用いてK+N散乱のデータから推定した。その結果、I=1セクターに比べI=0セクターでのフィットが良くないことがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
K-d→πΛN反応を用いたΛN系での荷電対称性の破れに関する研究については昨年より進展があり、日本物理学会や研究会で発表を行った。また原著論文についてもまとめ、プレプリントを公開、3月末時点で学術雑誌に投稿中である。 核媒質中でのストレンジクォークの振る舞いの研究についても、定式化とパラメータの推定を行うことができた。K中間子核子散乱を用いたパラメータの推定に関してI=0でのフィットが良くないことに関して、物理的な課題が見えたので次年度に行う。本研究内容に関しては日本物理学第77回年次大会で発表を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
まずK中間子核子散乱を用いたパラメータの推定に関してI=0セクターでは共鳴状態が散乱に影響を与える可能性があるため、この影響を考慮してフィッティングを行う予定である。また、核物質をSU(3)に拡張した場合のクォーク凝縮の振る舞いについても議論を行う予定である。研究結果が揃い次第早急に学術論文にまとめる。
|