2020 Fiscal Year Annual Research Report
Study of molecular and neural mechanism of 2-day rhythm in Holotrichia parallela
Project/Area Number |
20J20662
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渡邊 耕平 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 概日時計 / 二日リズム / 概倍日リズム / RNA-seq解析 / 時計遺伝子 / オオクロコガネ |
Outline of Annual Research Achievements |
「概倍日リズムは概日時計により構成される」という仮説に基づき、まず時計遺伝子配列の獲得や48時間周期で発現する遺伝子の探索のためオオクロコガネの全脳サンプルからのRNA-seq解析を行った。6時間ごとにオオクロコガネ成虫脳(n=4)からRNA抽出を行い、概倍日リズムの2周期分である4日間、計16位相でのサンプリングの後、外部委託によりRNA-seq解析を行った。解析の結果、時計遺伝子periodの配列4057bpが得られ、この他にも時計遺伝子配列が得られた。また遺伝子発現量の指標となるTPM値の位相間の比較により、period mRNAが24時間周期で振動している可能性が示唆された。 また、左右視葉間の神経横連合(脳の両半球をつなぐ神経線維)が概倍日リズムの維持に関与するかを明らかにするために視葉間の神経切断実験を行った。視葉と脳葉の間をタングステン針で切断し、再接続を防ぐため0.5 mm四方のラップ片を切断部に挿入して行動観察を行った。実験群生存個体は12個体中6個体となったが、このうち1個体において出現日の入れ替わり(スイッチング)が見られた。このスイッチングの割合は先行研究にて片側視葉を除去したものとおおよそ同じであった。視葉を除去せずともラップ片を間に挟むだけで連続性が不安定になることから、二日リズムの安定性は左右二つの視葉の存在(左右視葉からの液性因子)ではなく、直接の神経連絡によって制御されると考えられる。 さらに、継代飼育個体のオオクロコガネ幼虫において低温処理を行い幼虫期間の短縮ができる環境を検討した。通常時25℃で管理し、終齢幼虫のある期間で20日間低温処理(13℃±1)を行ったところ、60日後には3割ほどの個体が蛹化、羽化した。処理を行うことで成虫羽化までの期間が最短5か月となり、この温度条件では1年に2サイクルの継代飼育が可能であると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RNA-seq解析により目的であった概日時計遺伝子periodの全長配列が得られており、これにより今後のノックダウン実験や組織染色を進めることが可能となった。RNA-seqのデータは今後、2日周期の形成に関与する遺伝子の探索への活用も期待できる。神経切断実験では個体数は少ないものの、視葉間の直接連絡が概倍日リズム維持に関与する可能性を示した。継代飼育期間の短縮により、今後年間で実験が可能な期間が延長されることが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今回得られたperiod配列を用いて概日時計細胞の同定を行う。抗体を作製し、免疫組織化学により時計細胞を探すか、in situハイブリダイゼーションでperiod mRNAを発現する細胞を探す。そして、Pigment-dispersing Factor(PDF)ニューロンや脳間部細胞との連絡を調べることで、時計細胞から脳間部までの時計シグナルの出力経路を調べる。 また時計遺伝子の発現をRNA干渉法(RNAi)によって抑制して歩行活動の記録を行い、概倍日リズムへの影響を調べる。
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