2020 Fiscal Year Annual Research Report
固体クロスカップリング反応による固相精密分子変換手法の開発
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20J20675
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
瀬尾 珠恵 北海道大学, 大学院総合化学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | メカノケミストリー / ボールミル / 鈴木-宮浦クロスカップリング / パラジウム / 結晶化 / モノアリール化 / 不溶性化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度はコロナで研究できない期間が非常に長かったにも関わらず、2報の論文を投稿することができ多くの成果を上げることができた。また、オンラインで国内だけではなく国際学会にも参加する機会があり、2件のポスター賞を受賞することができた。 以前から引き続き行っているメカノケミストリーによる固体クロスカップリング反応の開発を行っている。メカノケミカル条件下における液体と固体の基質の反応性の違いに着目することで、溶液系とは異なる選択性の発現に初めて成功した (Seo, T.; Kubota, K.; Ito, H. J. Am. Chem. Soc. 2020, 142, 9884.)。メカノケミカル条件下においては液体の基質は拡散効率が高いため反応性が高いのに対して、固体の基質は拡散効率が低いため、反応性が低い。この反応性の違いを利用することで、2か所の反応点を有する基質に対して反応を行ったところ、溶液条件下では2か所反応した化合物が主生成物として得られるのに対して、メカノケミカル条件下では1か所のみが反応した化合物が主生成物とし得られる。 さらに、以前報告した固体状態で進行する鈴木宮浦クロスカップリング反応は、有機溶媒に溶けにくい難溶解性の基質に対しては適用できないという問題点が残されていた。それに対して以前報告した触媒系にプラスして外部からヒートガンを用いて加熱をしながら反応を行う、加熱ボールミル法を用いて反応を行うことで、難溶解性のアリールハライドに対するクロスカップリング反応の開発に成功した(Seo, T.; Toyoshima, N.; Kubota, K.; Ito, H. J. Am. Chem. Soc. 2020, 143, accepted.)。この手法を用いることで、溶解性問題から溶液系では合成できない化合物群に対するクロスカップリング反応にも成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度は2報の論文を投稿することができ、メカノケミストリーを用いた固体クロスカップリング反応の有用性を多く示すことができた。特に昨年の4月に報告した反応系中の結晶化を利用した鈴木-宮浦クロスカップリング反応では、固体反応特有の反応性を利用することで溶液とは異なる選択性の発現に初めて成功している。メカノケミカル条件下においては液体の基質は拡散効率が高いため反応性が高いのに対して、固体の基質は拡散効率が低いため、反応性が低い。この反応性の違いを利用することで、2か所の反応点を有する基質に対して反応を行ったところ、溶液条件下では2か所反応した化合物が主生成物として得られるのに対して、メカノケミカル条件下では1か所のみが反応した化合物が主生成物とし得られることがわかった。 また、3月に報告した不溶性アリールハライドに対する固体クロスカップリング反応では、溶液系では合成できない新規化合物の合成にも成功している。以前報告した固体状態で進行する鈴木-宮浦クロスカップリング反応の触媒系にプラスして、外部からヒートガンを用いて反応を行う加熱ボールミル法を用いて反応を行うことで、不溶性化合物に対するクロスカップリング反応に成功している。以前の加熱をしないメカノケミカル条件下では反応が進行しなかった化合物群にたしても本反応を用いることで反応時間5分で定量的に目的の化合物が得られる。また、色素や顔料などの不溶性化合物にたいしても適用可能であり、従来の有機合成反応において大きな課題の一つであった溶解性問題を克服する有用な手法になることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、今まで得られた知見を活かしてメカノケミカル反応用の配位子デザインを行う予定である。モデル反応としては、前年度において報告した固体状態で進行する鈴木-宮浦クロスカップリングを行う予定である。配位子に対してメカニカルなエネルギーを受け取ることのできる長鎖アルキル基やPEG鎖などの高分子鎖を導入する。これにより、メカノケミカル条件下において力を受け取ることで、高い触媒活性を示す配位子のデザインができないかと考えた。様々な高分子鎖を導入した配位子を合成し、その長さに対する反応性の違いを調査する。必要に応じてヒートガンを用いた加熱ボールミル条件下でも検討を行う。その後は様々な種類の高分子を導入して反応性を調査するだけでなく、二か所や三ケ所導入された配位子の合成も行い、その反応性も調査する。種々検討を行い高活性な配位子の合成を行った後に、以前報告した触媒系において低収率である基質や、反応が進行しなかった基質に対して反応を行うことで以前報告した触媒系に対する有用性を示す。最後に高分子鎖の影響を調査する。まず反応時間に対する収率を調査することで、導入された高分子鎖によって触媒を失活を抑制する役割があるのか、メカニカルなエネルギーを受け取ることによる前述したメカノ触媒として作用しているのかについて調査する。そして、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)、固体リンNMR測定を行うことで反応混合物を観察することで反応活性種の同定を行うだけでなく高分子鎖の影響に対する知見を得る。
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Research Products
(5 results)