2020 Fiscal Year Annual Research Report
X線偏光撮像とX線精密分光による活動銀河核トーラスの構造の解明
Project/Area Number |
20J20685
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
朝倉 一統 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 活動銀河核 / X線干渉計 / X線CCD / 太陽風 / 電荷交換反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、研究実施計画に基づき、自身の研究対象である活動銀河核の観測にむけて、主に2つの装置の開発に尽力した。一つは、X線分光撮像衛星XRISMに搭載されるX線CCD、「Xtend」の開発である。私は博士前期課程からXtendの各種試験に携わっており、本年度も開発メンバーの一員として多くの試験に参加し、現場作業とデータ解析の両面でチームに大きく貢献した。もう一つは、従来のX線天文衛星に搭載されてきたX線撮像系とは異なり、回折格子とX線撮像素子の組み合わせで高角度分解能を実現するX線撮像系、「多重像X線干渉計」の開発である。2019年度までの段階で課題の一つであった「有効面積」の向上を目標として、本年度では回折格子よりも開口率の高い「多重化コーデッドマスク」を導入し、2020年7月にSPring-8で性能評価実験を実施した。その結果、角度分解能を損わずに、有効面積を2019年度から約25倍に増大させることに成功した。この結果は多重像X線干渉計の実現にむけた大きな一歩であり、2020年12月には国際学会で私自身が口頭発表を行った。 また、博士前期課程ですざく衛星のアーカイブデータから発見した、太陽風電荷交換反応によるX線放射について、詳細な議論を進めた。本年度に、この反応がCoronal Mass Ejection(CME)と関連していること、及びその場観測が難しいCME内の高階電離イオンの探査にこの反応が有用であることを見出した。この結果も国内学会で発表済のほか、日本天文学会欧文研究報告に投稿し、本年度に受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では、X線偏光観測衛星IXPEとX線分光撮像衛星XRISMの同時観測により、活動銀河核のトーラス構造を明らかにする予定であった。しかし、衛星の機能追加、及びCOVID-19の影響により、IXPEとXRISMの打ち上げが、それぞれ2021年10月、2022年度に延期されることとなった。これにより、当初の研究計画の一部は変更を余儀なくされる状況にある。特にXRISMに関しては、解析対象となる活動銀河核を2022年度内に観測するのが困難な現状にあり、研究計画を見直す必要がある。 また、国内で実施されたXRISMの各種試験には一通り参加できたが、海外で実施されたIXPEの較正試験には参加できなかった。上記の研究実績は達成できた一方で、これらの項目は研究計画通りに進展しなかったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
打ち上げの延期により、2022年度内にXRISMで活動銀河核を観測するのは困難となったが、IXPEは2021年度の打ち上げ後、データが即時公開されるため、自身の研究に活用することが可能である。 IXPEチーム内では事前に解析ツールが配布されており、観測データが入手でき次第、すぐに解析に着手できるよう、解析練習を進めている。また、近年、高角度分解能をもつChandra衛星の観測データを活用して、近傍活動銀河核周囲のガスの空間分布・状態を探査した研究がいくつか報告されている。これらの研究をうけて、自身もChandra衛星による近傍活動銀河核の観測データの解析を進めており、IXPEの観測データと合わせてトーラス構造に制限をかけることができるか、議論を進めている。 これらと同時に、将来の観測にむけた多重像X線干渉計の開発にも引き続き着手していく。2021年度も新たな多重化コーデッドマスクを導入して性能評価実験を行う予定であり、更なる性能向上が期待される。今後は実験で得られた性能をもとに、具体的な観測計画の検討も進めていきたいと考えている。
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Research Products
(8 results)
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[Presentation] Subsub-arcseconds x-ray imaging with multi-image x-ray interferometer module (MIXIM): experimental results2020
Author(s)
Kazunori Asakura, Kiyoshi Hayashida, Takashi Hanasaka, Tomoki Kawabata, Tomokage Yoneyama, Hirofumi Noda, Shotaro Sakuma, Koki Okazaki, Ayami Ishikura, Maho Hanaoka, Shuntaro Ide, Kengo Hattori, Hironori Matsumoto, Hiroshi Tsunemi, Hisamitsu Awaki, Hiroshi Nakajima, Junko S Hiraga
Organizer
SPIE Astronomical Telescopes + Instrumentation 2020
Int'l Joint Research