2021 Fiscal Year Annual Research Report
Multilevel society in feral horse
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20J20702
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
前田 玉青 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | ウマ / 重層社会 / ドローン / 集団行動 / 社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、2019年までのデータを解析し、重層社会をもつウマ集団における行動の同期を解析した。申請者らはウマにおける重層社会の存在をこれまでに示してきたが、今回は、この重層社会における群れ間の行動調整の一端を明らかにした。「同期」とは、ある行動が個体間で伝播し、行動が自然と揃う現象のことを言う。群れを作る動物では、群れのまとまりを保持するために、行動の同期は非常に重要な役割を果たしている。しかし、あくまで群れ内での同期であって、群れ間で行動がどのように調整されているのかはほとんど分かっていなかった。解析の結果、重層社会を持つウマは、これまで考えられてきたよりも広い範囲の個体を常に認識し、群れを超えて行動を同期させることが示唆された。今回考案したモデルは、ヒトを含む他の重層社会における行動同期にも当てはめられる可能性があり、重層社会における集団の維持機構を知るうえで非常に重要な研究成果と言える。本研究成果はPLOS ONEに公開された。 さらに、本年度より、集団全体のビデオデータトラッキングにも試みている。それにより、行動同期が広がる様子をより高い時間解像度で捉え、その詳細なメカニズムを明らかにする予定である。 また、野生化ウマの尾にGPS発信機を装着し、冬季の行動観察を試みた。冬季はウマの群れ同士が遠く離れて暮らすと考えられてきた。結果的にGPSは数ヶ月で脱落してしまったが、ウマが冬季も小さな集団で暮らしている可能性があることが解析により分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの蔓延により、調査地への渡航はできなかったが、現地の協力者および研究室内の共同研究者により、データをある程度集めることができた。 ほか、解析については概ね予想通りに行なっている。
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Strategy for Future Research Activity |
①ビデオデータの取得・動きの解析 重層社会としての個体のまとまりを維持するメカニズムを解明するため、空中より動画を撮り、ウマの動きを解析する。機械学習を用いた自動トラッキングシステムにより、ウマの動き・位置などの情報を得る。 ②ウマに装着するGPS発信機の改良 昨年度、GPS発信機が数ヶ月ほどで落下してしまったため、その改良を行う。GPSはポルト大学と共同開発をおこなっており、ポルトガルにて装着方法の見直し・飼育馬を用いたテストを行う。 ③新たな調査地の視察 一口に野生化ウマといっても、その社会構造は地域によっても異なり、重層社会を持っていない集団もいる。それらの違いがなぜ生まれるのか明らかにするため、現在調査を行なっているポルトガルのアルガ山個体群に加えて、新しい調査地でも研究を発展させ、種内比較を行いたい。候補として日本の都井岬個体群(御崎馬)とイタリアのカルヴァナ個体群が挙がっており、両地域への視察を行う予定である。
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Research Products
(5 results)