2020 Fiscal Year Annual Research Report
有機超塩基触媒が拓く不活性炭素ー酸素結合の直截的変換反応
Project/Area Number |
20J20712
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
林 和寿 東北大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 有機超塩基 / 不活性結合 / 芳香族化合物 / 芳香族求核置換 / 有機触媒 / 芳香族複素環 / 炭素ー酸素結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
ハロゲン化アリールの芳香族求核置換反応は炭素-ハロゲン結合でイプソ位選択的に進行する有用な反応である。しかし、一般的に化学量論量の塩基が必要であり、化学量論量の塩が排出される。このSNAr反応がもつ課題の解決に資する変換反応の開発に興味が持たれる。ところで、近年ハロゲン化アリールに代わり堅牢性の高いメトキシアレーンでの変換反応の開発が注目されている。今回堅牢性の高い芳香族炭素(sp2)-メトキシ結合における芳香族炭素(sp2)-炭素(sp3)結合形成反応が進行することを見出した。具体的には、嵩高い有機超塩基t-Bu-P4を用いることでアルカンニトリルを求核剤として芳香族求核置換反応が進行する。今回の反応は触媒量の塩基で反応が進行し、過剰な塩基を必要としないため無機廃棄物が生じず、副生成物はメタノールのみである。求電子性のシアノ基やニトロ基の他、酸性度の高いカルボニルα位水素を持つ基質や塩素原子を持つ基質にも適用可能であった。チオフェンやインドール、ピリジン等の芳香族複素環を持つ基質にも適用可能である。求核剤としてはpKa約23から33の幅広い酸性度のアルカンニトリルを用いることができる。今回の反応は、立体的に混み合った4級炭素をもつ化合物を効率的に与えるものである。 加えて、β-アリールエーテルを反応基質とすることでアミン求核剤による炭素(sp3)-メトキシ結合の付加反応を達成した。反応機構としては、まず基質からメタノールが脱離してアリールアルケンを形成した後に、求核剤がアルケン部位に付加する二段階の反応過程から成ることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
芳香族炭素(sp2)-メトキシ結合の変換反応としてこれまでアルコールおよびアミンを求核剤として取り上げてきたが、当該年度において、アルカンニトリルを求核剤とする炭素―炭素結合形成反応が進行することを示した。この反応は、当初計画していなかった反応であるものの、本反応系の高い有用性および展開性を示す結果である。加えて、β―アリールエーテルでの炭素(sp3)-メトキシ結合へのアミン求核剤による付加反応も反応機構を解明し、様々な基質適用範囲に広げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、β-アリールエチルエーテルを反応基質として、炭素(sp3)-メトキシ結合の求核剤の付加反応を開発する。アミン求核剤を用いた付加反応を参考に、求核剤をチオールへと展開する。4位にトリフルオロメチル基を有するβ-アリールエチルエーテルと求核剤として、ベンジルチオールを用いる。本反応では副生成物としてメタノールが生じるためモレキュラーシーブスの添加効果についても検討する。各種有機塩基(アミジン、グアニジン塩基、t-Bu-P2、t-Bu-P4)や無機塩基(アルコキシド、水素化ナトリウム、アミド塩基)の効果を調べる。 また、芳香族炭素(sp2)-メトキシ結合変換反応のさらなる求核剤の基質適用範囲拡大を行う。 さらに、上記の研究内容について、得られた結果を取りまとめ、学会発表、英語論文投稿を行う。
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Research Products
(3 results)