2021 Fiscal Year Annual Research Report
高配位ケイ素を基盤とする無保護カルボン酸の直截的かつ触媒的不斉反応の開発
Project/Area Number |
20J20751
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
吉原 勇作 熊本大学, 薬学教育部, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 有機化学 / 触媒化学 / 不斉反応 / カルボン酸 / アルドール反応 / ホスフィンオキシド / ケイ素 |
Outline of Annual Research Achievements |
カルボン酸およびその誘導体は、生体構成成分や医薬品等の生物活性物質などに幅広く存在している薬学研究において重要な官能基群であるにも関わらず、これらの官能基の直截的かつ触媒的な立体選択的分子変換に関する研究は、ほとんど行われていなかった。そのため従来の有機合成化学ではエステルやニトリル等のカルボン酸等価体で所望の反応を起こした後に加水分解によりカルボン酸に変換する手法が用いられてきた。より効率的に所望の分子構造を構築するためにはカルボン酸を直截的かつ触媒的に活性化する手法の開発が重要であると考えられる。そのような背景のもと、本研究課題では、独自に開発した「塩化ケイ素試薬によるカルボン酸の活性化」を基軸として、ケイ素試薬とホスフィンオキシド触媒を利用した無保護カルボン酸およびその誘導体の触媒的不斉反応の開発を目指した。 昨年度までに、無保護カルボン酸に対して様々な求電子剤を作用させる広範かつ網羅的な検討を実施したことで、α,β-不飽和ケトンに対するMichael付加反応、イサチン誘導体に対するアルドール反応、イミンに対するMannich型反応が進行することを見出していた。この結果を受け本年度は、昨年見出した結果について、化学収率及び立体選択性の改善を目指すための詳細な反応条件の精査を実施した。Michael付加反応では、用いるアミンを変更することで化学収率を大幅に改善し、90%を超える収率で目的物を得ることに成功した。イサチン誘導体とのアルドール反応では、最高で89%eeの不斉収率で目的物が得られる条件を見出した。 またその他にも、カルボン酸誘導体の活性化に関する検討も実施し、特定のアミド化合物を効果的に活性化できることを見出し、90%eeを超える立体選択性で所望の反応を進行させることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までに見出していた反応の多くは、反応は進行するものの化学収率や立体選択性に改善の余地を残していた。本年度は、これらの課題点について、適切な反応条件の精査を行うことで解決することに成功した。 ・Michael付加反応:使用するアミンの種類をスクリーニングし大幅な化学収率の改善に成功した。また触媒スクリーニングにより高いエナンチオ選択性を発現させることにも成功した。 ・イサチンへの付加反応:用いる試薬の種類や等量を厳密に精査することで化学収率と立体選択性の向上に成功した。更に得られた最適条件により基質適用範囲の調査を行い、最高で89%eeの立体選択性で目的物を得ることに成功した。 ・カルボン酸誘導体を用いた不斉反応:論文公表前のため詳細は割愛するが、特定のアミド化合物を効果的に活性化できることを見出した。更に、本年度中に条件検討や基質適用範囲の検討をほぼ完了し、数十種類の基質で高い収率かつ立体選択性で所望の化合物を得ることに成功した。 このように昨年度までに得られていた研究成果をより有用な反応へ発展させることができたため、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。また、投稿論文として結果をまとめるまでには至っていないが、成果をまとめて口頭やポスターにて学会発表を年度内に2件行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究はおおむね順調に進展しているので、引き続き当初の研究実施計画に従いこれからも研究を進める予定である。令和3年度は、α,β-不飽和カルボニル化合物への不斉共役付加反応に関しての反応条件の最適化を行い、化学収率及び立体選択性の改善に成功した。イサチン誘導体との不斉アルドール反応やカルボン酸誘導体の不斉反応では条件検討及び基質一般性の調査を実施し、一定の成果を得ることができた。最終年度となる令和4年度は、これまでに得られた実験結果に基づき、反応機構解析および立体反応経路を明らかにしていくとともに、得られた研究成果の公表に向けて積極的に学会発表及び論文投稿を行っていく予定である。
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