2021 Fiscal Year Annual Research Report
一般アクセス構造を持つ秘密分散法の効率性及び機能性の向上
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20J20797
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
江利口 礼央 東京大学, 情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 秘密分散法 / マルチパーティ計算 / 一般アクセス構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の主な研究成果は次の二つである. A) 対称関数に対する非対話型マルチパーティ計算プロトコルの効率化. B) 一般アクセス構造に対する準同型秘密分散の効率化および並列計算への拡張. まず成果Aで扱った非対話型モデルはプレイヤが非同期的にマルチパーティ計算を実行できるため大規模なマルチパーティ計算の実現において重要である.本研究では統計量の計算において用いられる基本的な統計関数を含む対称関数に注目し,既存プロトコルの通信量の改善を行った.また,機械学習において重要な線形分類器を含む,対称関数を一般化した関数クラスを導入し,それらの関数に対して効率的なプロトコルを初めて提案した.線形分類器に対しては,任意の関数を計算できるものの通信量が指数的に増大する非効率的な構成しか知られていなかったため,提案プロトコルは当該分野のstate-of-the-artの成果を推し進めることにつながった.さらに既存研究の中で提案されたプレイヤの結託に対する安全性強化の手法に安全性上の問題が存在することを指摘し,その修復も行った. 続いて成果Bで扱った準同型秘密分散は通信ラウンド数最小かつ通信量が関数の複雑性に依存しないマルチパーティ計算を実現するための要素技術である.既存方式は閾値型の限定的な結託耐性しか達成できない一方,本研究は現実世界で想定される結託パターンを定式化し,多様な結託耐性を持つ高効率な方式を提案した.従来の一般的構成と比べ通信量を指数的に削減するだけでなく,単一の関数を複数回計算するSIMD演算への拡張も実現している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では一般アクセス構造に対する乗算可能な秘密分散法の提案およびその理論的評価を実施する予定であったが,それだけにとどまらず並列計算への拡張を行いマルチパーティ計算の高機能化・高効率化を実現している.さらにマルチパーティ計算それ自身への研究にも着手し,現実の状況を捉えた非対話型モデルにおいて通信量の削減を行った.この成果は要素技術である秘密分散法の改良だけでは達成しえなかったものである.またマルチパーティ計算の中でもデータの秘匿検索機能に特化したプロトコルの提案にも成果をまとめ,学会に現在投稿中である.上記のことから本年度は当初の計画以上に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
まず前年度までの成果の一つである強安全なランプ型秘密分散法の効率的な構成を他の暗号プロトコルへ応用可能であるかを調査検討する.具体的には強安全性から従う数学的な性質を用いて複数ユーザが存在する状況において効率的にデータの秘匿検索を実現するSymmetric Private Information Retrieval(symmetric PIR)への応用を検討する. 続いてマルチパーティ計算の中でも現実への応用を見据えた実用的な関数に対して高効率なプロトコルを提案することを目指す.具体的には上述したデータの秘匿検索を含むPrivate Information Retrievalと呼ばれる暗号技術に関してさらなる研究を進め,最適通信量の解析やサーバの悪意のある改ざんを訂正・検出可能な高機能な方式の構成を検討する.
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