2020 Fiscal Year Annual Research Report
異種細胞間の接着を可能とするナノ両面テープの創製とがん免疫療法への展開
Project/Area Number |
20J20799
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大林 洋貴 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 両親媒性ペプチド / バイオマテリアル / 自己集合 / 超分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は二成分の分子をDNA様の相補的な水素結合を介して自己集合 (共集合) させることにより二種類の細胞に接着可能な構造体 (ナノ両面テープ) を作成し異種細胞を近接させることを目的としている。昨年度はナノ両面テープとなり得る超分子材料に求められる性質を評価することを中心に研究活動を行った。具体的には、形状の異なる共集合体の構築と細胞との相互作用の評価を行った。 これまでに、相補的な水素結合部位とペプチド部位とを結びつけるリンカー部分の設計が共集合体の形成駆動力と形成される共集合体のサイズに大きな影響を与えることが分かっており、ナノロッド状とナノファイバー状構造を有する共集合体を構築した。昨年度はリンカー長のデザイン検討を拡張し、球状構造および、発達したナノファイバー状構造の共集合体を構築することに成功し、これら4種類の共集合体と細胞との相互作用について解析した。 前述した4種の共集合体について細胞との相互作用を解析すると球状構造体とナノロッド状構造体がナノファイバー状構造体と比較して有意に細胞内取り込み量が大きいことが示唆された。この結果は、形状に応じて細胞への内在のしやすさが変わることを示しており、細胞表面への貼付においてはより大きなファイバー状構造体を構築することが重要であることが示唆された。 以上の結果についてまとめ、第14回バイオ関連化学シンポジウムおよび化学工学会第86年会で発表した。バイオ関連化学シンポジウムでは、上位3番以内の優れた発表の一つに選出していただき『Organic & Biomolecular Chemistry』賞を授与された。また、本内容については、現在筆頭著者として執筆を行っており、論文投稿準備を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度はナノ両面テープとなり得る超分子材料に求められる物性を評価することを中心に研究活動を行った。具体的には、形状の異なる共集合体の構築と細胞との相互作用の評価を行った。これまでに構築していたナノロッド状とナノファイバー状構造を有する共集合体に加え、球状構造および、発達したナノファイバー状構造の共集合体を構築することに成功し、これら4種類の共集合体と細胞との相互作用について解析した。結果として球状構造体とナノロッド状構造体がナノファイバー状構造体と比較して有意に細胞内取り込み量が大きいことが示唆された。この結果は、形状に応じて細胞への内在のしやすさが変わることを示しており、細胞表面への貼付においてはより大きなファイバー状構造体を構築することが重要であることが示唆された。以上の結果については、現在筆頭著者として執筆を行っており、論文投稿準備を行っている。さらに、昨年度は、ナノファイバーが取り込まれる際の経路とメカニズムおよび細胞内での局在を明らかにした。これらは、細胞膜表面への局在性を高める上でも有益な知見であると考えられる。以上の理由からおおむね順調に研究が進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、細胞膜表面への提示率を高めるために、細胞内取り込み経路、メカニズム、局在についての検討を深める。特に異種細胞の近接に効果的な特定種の細胞膜表面に効率的かつ持続的に貼付可能なナノ構造体の構築を試みる。その後、異なる二種類の細胞への親和性因子を導入するために、まず二種類の直交した酵素反応性ユニットを有する分子の合成を目標とする。合成後はこれらの分子が共集合体を形成するかどうかの確認を各種分光器や顕微鏡観察によって行う。さらに、遺伝子工学的に酵素反応性部位を導入した蛍光タンパク質を添加し、事後修飾的かつ精密に二成分のタンパク質を提示可能な共集合システムの構築を確認する。その後、細胞に接着性を有するタンパク質に酵素反応性のタグを遺伝子導入し、それらが共集合体表面に酵素反応的に提示可能かどうか評価を行う。上記の材料設計と初期検討が達成された後には実際に二種類の細胞を用いた実験を行い、ナノ両面テープによる両細胞の近接化とそれに伴うがん治療の可能性の検証を行う。
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