2021 Fiscal Year Annual Research Report
異種細胞間の接着を可能とするナノ両面テープの創製とがん免疫療法への展開
Project/Area Number |
20J20799
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大林 洋貴 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 両親媒性ペプチド / バイオマテリアル / 超分子 / 細胞 / タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、両親媒性ペプチド(PA)と小分子から形成される共集合体に、2種類の細胞への親和性因子を導入することで、異種細胞を近接可能なナノ構造体 「ナノ両面テープ」 を作製することを目的としている。2021年度は、1.細胞表面に接着可能な共集合体創製に関する検討、2.タンパク質の共集合体表面への導入に関する検討、を行った。
1.細胞・人工脂質膜を用いた検討によって、共集合体がエネルギー非依存的な細胞内移行を示すこと、共集合体が細胞表面タンパク質・細胞膜の両者に対する相互作用を示すことを確かめた。また、細胞内移行性は共集合体のサイズに依存し、大きな共集合体が細胞内に移行しにくいことが示唆された。細胞同士を近接可能なナノ両面テープの創製には、細胞表面への高い親和性を有し、且つ細胞内への移行性が低い(細胞表面への接着性が高い)共集合体の創製が必要である。PAと小分子双方の分子設計を改変し、より強固に発達した共集合体を構築することで、ナノ両面テープの創製を目指した。共焦点レーザー顕微鏡観察の結果、疎水性の高い小分子からなる共集合体が細胞内に移行せず細胞表面に接着している様子が確認された。 2.ペプチド-タンパク質間の非特異的な相互作用を利用した共集合体表面へのタンパク質導入法について評価を行った。蛍光タンパク質と共集合体とを混合し共焦点レーザー顕微鏡観察を行ったところ、共集合体表面にタンパク質が吸着している様子が観察された。また、PAの分子設計に応じて共集合体の性質を改変することでタンパク質の吸着性が変化することが示された。さらに、種々のタンパク質を用いた検討の結果、共集合体との相互作用が酵素活性等のタンパク質機能に影響を与えることが示唆された。
以上の研究成果について、3件の国内学会および1件の国際学会で発表を行った。また、現在、筆頭著者として論文執筆を行っており、近く投稿予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度までに、共集合体のサイズや形状が細胞内移行性に影響を与える因子であることを報告した。2021年度は、共集合体の細胞内への移行メカニズムを明らかにし、細胞表面への親和性を有しながら、細胞内への移行性が低い (細胞表面に保持される) 共集合体の創製を目指した。細胞および人工脂質膜を用いた検討により、本共集合体が脂質膜と親和性を有すること、疎水性の高い分子からなる共集合体を用いることで細胞表面への接着性を高められることを確かめた。 また、共集合体表面へのタンパク質の導入に関する検討についても並行して行った。具体的にはペプチドとタンパク質との間の非共有結合的な相互作用を利用した共集合体表面へのタンパク質の導入を試みた。モデルタンパク質として蛍光タンパク質あるいは蛍光ラベル化酵素を用いた検討により、共集合体とタンパク質を混合することで、共集合体表面にタンパク質を非共有結合的に導入可能であることが示唆された。 以上のように、2021年度は本研究における重要課題 (共集合体の細胞表面への接着、共集合体への異種分子の導入) において進歩があったため、おおむね順調に研究が進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度までに、我々の考案した共集合システムについて、分子設計によって異なる形状・サイズを有する共集合体を作製可能であること、形状・サイズに応じた細胞内移行が生じることを示した。さらに、分子設計を改変することで、細胞表面への接着が可能な共集合体の創製に成功した。また、本共集合体は非共有結合的に表面にタンパク質を導入可能であることを確めた。 2022年度は、異種細胞を近接可能なナノ両面テープの実現のため、異種細胞それぞれに親和性を示すタンパク質を共集合体に導入する。タンパク質の導入法として、これまでに行った非共有結合的な相互作用を利用した方法の他、共有結合による方法も並行して進める。タンパク質を共有結合的に導入するために、酵素反応を用いた方法を用いる。PAに酵素反応性ユニットを導入し、共集合体を形成させた後、遺伝子工学的に酵素反応性部位を導入した細胞親和性タンパク質を添加し、酵素反応を利用して共有結合的にタンパク質を表面に提示する。二種類の直交した酵素反応性ユニット導入することで、異種タンパク質を共集合体上に提示することが可能であると考えられる。その後、表面へのタンパク質提示を行った共集合体を用いて、実際に異種細胞の近接化実験を行う。細胞には、がん細胞とナチュラルキラー細胞を用い、それぞれに対する親和性を持つタンパク質を共集合体に提示し、両細胞の近接化とそれに伴うがん殺傷効果の評価を行う。細胞親和性タンパク質を非共有結合により導入した場合との比較を行い、親和性因子の提示法が細胞近接性および細胞間作用に与える影響について評価を行う。
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