2020 Fiscal Year Annual Research Report
教育による社会の発展をモデル化する―文化進化研究による理論・実証アプローチ―
Project/Area Number |
20J20818
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中田 星矢 北海道大学, 文学院, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
|
Keywords | 累積的文化進化 / 教育 / 強化学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
教育は個人の技術・知識の獲得を助けるのみならず、社会全体の発展に寄与している。本研究の目的は文化進化論の枠組みから教育のグループダイナミクスを定式化することである。文化は動物界にもありふれているが、世代を超えた伝達を経るごとに文化を複雑化させていく累積的文化進化はヒト固有であると考えられている。文化進化論では累積的な文化進化を可能にする鍵は教育による正確な文化伝達であるという仮説が提唱されてきた。この仮説は主に実験研究によって検討されてきたが、結果は一貫していない。本年度は、教育を受けることによる技術・知識獲得のプロセスを強化学習によって、複雑な技術を複雑ネットワークによって表現する計算論モデルを構築した。このモデルを用いたコンピュータ・シミュレーションによって、強化学習エージェントからなる人工社会において、知識が蓄積され、単独個人では到達できないほど高度な累積的文化進化が発生する条件を検討することが可能になった。その結果、教育が累積的文化進化を促進するのは課題が複雑な場合に限られる可能性が示された。この結果は従来の実験研究と理論研究の知見を整合的に説明するための基盤を与えてくれるものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は新たな計算論モデルを構築したが、当初の想定以上のペースでコンピュータ・シミュレーションを進め、重要な知見を得ることが出来た。一連の結果は論文としてまとめている。また、言語進化・文化進化という関連するテーマについて、関連領域の研究者との共同研究を計画中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度には追加のシミュレーションを実施予定である。また、教育と技術の文化進化実験を実施するために、考古学分野の研究者および発達科学分野の研究者と打合せを行う。
|
Research Products
(3 results)