2021 Fiscal Year Annual Research Report
教育による社会の発展をモデル化する―文化進化研究による理論・実証アプローチ―
Project/Area Number |
20J20818
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中田 星矢 北海道大学, 文学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 累積的文化進化 / 教育 / 強化学習 / コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト以外にも文化を持つ動物はいるが、ヒトの文化だけが累積性を持つことが知られている。本研究では、技術の累積的な文化進化を可能とする要因として忠実な伝達を促進する教育に注目し、そのメカニズムを検討するためのエージェントベースシミュレーションを実施した。その結果、複雑な技術と長期的な教育の共進化を示唆する知見が得られた。当該の結果は、課題の構造やエージェントの学習に関するパラメータなど(強化学習モデルにおける学習率と逆温度)を変更しても、広い範囲で頑健に再現されることが明らかになった。本成果は国内外の学会で報告し、現在国際学術誌への投稿論文を執筆中である。 また、技術に並び、ヒト固有性が強調されるヒト言語が持つ文法的な構造の累積的文化進化にも注目し、意図的かつ双方向的なコミュニケーションとの関連を実験室実験によって検討した。計算論的言語進化学における実験方法に則り、参加者による人工言語の学習及び文化伝達を組み込んだ実験をデザインした。さらに、参加者ペアがリアルタイムでコミュニケーションを取りながら課題に取り組むという要素も加えて、新たに実験プログラムを開発した。120名をリクルートした実験の結果、意図的かつ双方向的なコミュニケーションは、その必要性に関わらず世代を超えて安定した文法規則を創発させることが示された。だが、集団ごとに創発した文法規則は異なり、現実世界にも見られるような分岐が見られた。一方、コミュニケーションはなしで、世代間の文化伝達だけが行われる場合は、文法規則が生じにくい、あるいは不安定であることが示された。本成果は関連学会で高い関心を集め、学会発表賞を受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
新たなデータの蓄積によって、昨年度から継続的に実施しているシミュレーション研究の頑健性を高めることができ、当該分野において非常に高い理論的貢献が期待される結果を得ることができた。そのため、一流国際誌への採択が期待される。また、新たに開始した実験室実験においても、想定以上の知見を得ることができ、こちらの研究でも当該分野への大きなインパクトが見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた知見を公表するために、国内外の学会での発表、国際誌への論文投稿、書籍の出版を予定している。
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Research Products
(7 results)