2021 Fiscal Year Annual Research Report
大光量Ar検出器による低エネルギー液体Ar蛍光の理解と低質量暗黒物質探索
Project/Area Number |
20J20839
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
青山 一天 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 暗黒物質 / 液体アルゴン検出器 / TPC / 素粒子実験 / 暗黒物質探索 |
Outline of Annual Research Achievements |
暗黒物質の検出は現代物理学における最重要課題の一つであり、世界中で多種多様な方法を用いて探索実験が行われている。本研究の目的は高感度な液体アルゴン検出器を構築し、暗黒物質探索の感度を向上させることである。液体アルゴンは荷電粒子の通過により、"電離電子"と"シンチレーション光"の2種類の信号が生成され、その検出によりエネルギーや位置の再構成を行う。加えて、それら2種類の信号を組み合わせることにより、液体アルゴン検出器は強力な粒子識別能力を持つ。この粒子識別能力は稀事象探索実験において非常に有用であり、本研究では暗黒物質探索に向けて十分な粒子識別能力を持つ液体アルゴン検出器の開発を進めた。 宇宙線内の反重陽子の観測を気球搭載型液体アルゴン検出器を用いて行うことにより、先行実験の反重陽子観測の感度を2桁程度上回ることができることが分かった。反重陽子の観測により、背景事象と十分に分離した0バックグラウンド環境下での暗黒物質発見の可能性がある。加えて、同じデザインの検出器にて宇宙MeVガンマ線の検出も行うことができることも分かった。そのため、宇宙反重陽子と宇宙MeVガンマ線の同時観測に向けて液1相型の液体アルゴン検出器の準備を進めた。 本年度作成した検出器は直径10 cm、高さ12 cmである。シンチレーション光は上部に設置したPMTで、電子信号は検出器内に成形した電場で鉛直上方にドリフトし検出器上部の電極から読み出す。製作した検出器でアルゴンの信号検出に成功している。 並行して、過去に取得した液体アルゴン検出器のデータをもとに、観測に必要な検出器のエネルギー・位置分解能を求め、電離電子信号のエネルギー分解能の向上が重要であることが分かった。その結果は日本物理学会にて報告している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度製作した検出器でアルゴンのシンチレーション光および電離電子信号の両信号検出に成功した。また、検出器に要求するエネルギー・位置分解能の算出をすすめた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度作成した検出器の電子信号は1チャンネル読出しであったため、位置再構成ができない検出器であった。反重陽子の検出には飛跡の再構成が不可欠であるため、電子読出しの多チャンネル化を進める。
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