2020 Fiscal Year Annual Research Report
接合藻ヒメミカヅキモの生殖様式の進化:生殖様式転換実験と全ゲノム解析から探る
Project/Area Number |
20J20877
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
川口 也和子 千葉大学, 融合理工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 藻類 / 生殖様式 / 全ゲノム解析 / 遺伝子重複 |
Outline of Annual Research Achievements |
一倍体優勢の単細胞性藻類であるヒメミカヅキモ(Closterium peracerosum-strigosum-littorale complex)には、+型と-型の異なる交配型同士でのみ接合可能なヘテロタリック系統(以下ヘテロ)と、同一クローン間の接合が可能なホモタリック(以下ホモ)系統の2種類が知られている。これまでの研究により、系統間でゲノムサイズに2倍以上の連続した変異があることが明らかになっていた。ゲノムサイズ多型がどのようなゲノム構造の違いに由来するかを明らかにするため、全ゲノムデータを用いて系統間のゲノム構造比較を行なった。具体的には、4つの交配群に属する計6系統のロングリードシークエンスデータに対し、遺伝子アノテーションを付加し、オーソログ検索を行なった。その結果、ゲノムサイズ多型が交配群ごとに独立に生じた大規模なゲノム重複に由来すること、さらに、交配可能な系統間に異なる重複パターンが多く存在することが明らかになった。加えて、解析した6系統のうちホモ1系統は、異なる交配群に属するヘテロ2系統由来の異質倍数体であることが明らかになった。これは遺伝子ごとに作成した系統樹のトポロジー解析及び、16系統のショートリードシーケンスデータをマッピングして得られたSNPのパターンの解析により示された。さらに、そのホモ系統では、異なる親由来のゲノム間でホメオログ間組み換えが生じていることが示唆された。これらの結果は、本種では生殖様式に関わらず大規模なゲノム構造の変化が頻繁に生じていることを意味し、ゲノム重複に対する制約が緩和されている可能性を示した。さらに、ホモ系統ではホメオログ間組み換えにより遺伝的多様性が創出・維持されている可能性が考えられる。 なお、2020年日本植物学会第84回大会において、これらの研究成果の一部を口頭発表にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度における研究では、ヒメミカヅキモの複数系統の全ゲノムデータの比較を行なった。その結果、系統間にみられるゲノムサイズ変異は、独立に複数回生じている大規模な重複に由来することを明らかにし、さらに異質倍数体系統において由来の異なる配列間でホメオログ間組み換えが生じていることを示した。これにより、系統間のゲノム構造変異を大まかに理解でき、その要因も明らかになりつつある。よって、概ね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
全ゲノムデータを用いて明らかになったホモ系統のホメオログ間組み換えが、実際に有性生殖を経ることによって生じているのかを確かめるために、子孫株の作成およびゲノム解析を行なう予定である。さらに、ヒメミカヅキモにみられる系統間の重複パターンの違いが遺伝子発現量に与える影響を明らかにするために、RNA-seqを用いた発現量比較解析も行なう予定である。
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