2020 Fiscal Year Annual Research Report
超低強度運動による実行機能向上の生理機構:ドーパミン作動性神経系の関与
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20J20893
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
桑水 隆多 筑波大学, 人間総合科学学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 超低強度運動 / 有酸素能 / 実行機能 / ドーパミン / 前頭前野 / 脳機能イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
誰もが継続可能な一過性の超低強度運動(e.g. ウォーキング、低速なジョギング)は前頭前野左背外側部の活動を増加させ、実行機能を向上させる。その生理機構として脳内ドーパミン作動性神経系の関与を想定した。アミノ酸摂取による急性ドーパミン枯渇法とヒト脳イメージング法を併せて用いることで機構解明を目指す。初年度は、急性ドーパミン枯渇法の実験モデル確立とヒト脳内ドーパミンの間接指標を用いた横断的調査を行った。 急性 DA 前駆体枯渇法での国内での試行例は未だない。そこで、先行研究の実験モデルを基にアミノ酸混合摂取による血中アミノ酸の変化を検証した。その結果、ドーパミン前駆体であるチロシンとフェニルアラニンが血中で激減し、急性ドーパミン枯渇法によるチロシン、フェニルアラニンの利用可能性の低下を確認した。超低強度運動後においてもその効果は継続し、一過性運動の効果検証に有用であることが示唆された。 また、脳内ドーパミン作動性神経系の増加に伴って変化することが報告されている自発性瞬目率(無意識的に行う瞬きの頻度)に着目し、有酸素能(最高酸素摂取量)と実行機能との横断的な関係性を調査した。その結果、有酸素能力が高いヒトほど実行機能が高く、その二者の相関は、自発性瞬目率により媒介されることが明らかになった。この結果は、超低強度運動を含む習慣的な身体活動が脳内ドーパミン神経系の機能向上を介して実行機能を高めるとする本研究の仮説を支持するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、初年度までに急性ドーパミン枯渇法の導入、実験モデル確立及び予備実験によるアミノ酸摂取の妥当性検証まで完了することができ、本実験に移行する準備が整った。また、ドーパミン作動性神経系の間接指標とされる自発性瞬目率を用いた横断的研究から運動による実行機能増進効果の背景にドーパミン作動性神経系の関与があるとする知見を得ることができた。この成果はすでに論文受理済みである(MSSE, 2021)。自発性瞬目率は、非侵襲的なドーパミン間接指標として一過性運動効果の検証にも有用であり、急性ドーパミン枯渇法と併せることで今後の研究を加速することができる。以上より、進捗状況は概ね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
急性 ドーパミン前駆体枯渇法により超低強度運動による実行機能向上効果が減弱するかについて、健常若齢成人を対象に引き続き実験を進行する。次年度中にはデータ取得を完了し、認知課題成績、心理尺度、機能的近赤外分析法により計測された脳イメージングデータ、自発性瞬目率の解析に移行する予定である。
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