2020 Fiscal Year Annual Research Report
植物の葉器官のサイズ制御を司る内生代謝プログラムの解明
Project/Area Number |
20J20901
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
多部田 弘光 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
|
Keywords | 植物 / 葉器官 / fugu5変異体 / 補償作用 / サイズ制御 / メタボローム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
葉器官を構成する細胞の数が減少した場合、それを相補するかのように葉肉細胞が顕著に肥大する「補償作用」という現象が知られている。令和2年度では、補償作用を示すfugu5変異体を用いて、葉を構成する細胞数と細胞サイズの協調性を担う鍵因子群の同定を目指した。 はじめに、ガスクロマトグラフィー質量分析装置(GC-MS/MS)を用いたワイドターゲットメタボロミクスにより、fugu5の子葉における時系列メタボロームデータを獲得した。次に、複数の解析アルゴリズムを検討し、大規模な代謝プロファイル解析を行った。その結果、一括学習型自己組織化マッピング法(BL-SOM)を活用したクラスタリングにより、fugu5の子葉では、播種後4日目で代謝かく乱が生じるが、播種後6日目に代謝かく乱は野生型なみに改善され、播種後8日目から特徴的な代謝プロファイルがみられることを明らかにした。この特徴的な代謝プロファイルは、fugu5の補償作用が回復するショ糖の添加やfugu5背景の形質転換体であるfugu5 ICLpro::IPP1では確認されなかったため、補償作用と密接に関わる代謝変動であると推察された。さらに、相関ネットワーク解析及び階層クラスター解析の結果から、fugu5の過剰な細胞肥大に関与すると考えられる「鍵代謝経路」と「鍵代謝産物」の候補を複数見出した。現在、同定されたそれら鍵代謝産物がfugu5の過剰な細胞肥大にどのような影響を及ぼすのかを明らかにするため、添加実験系の構築及びその影響の定量的解析を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までに作出を終えたfugu5背景の多重変異体系統等を適宜用いてメタボローム解析を行った。その結果、上記の通り、fugu5における特徴的な代謝プロファイルを見出し、候補となる「鍵代謝経路」及び「鍵代謝産物」の同定に成功した。この成果は、細胞数と細胞サイズの協調性を担う鍵因子群を同定するという当初の大きな目的を達成したといえる。さらに、補償作用に関連した変異体を用いたワイドターゲットメタボロミクスにより、代謝酵素であるIBR10がオーキシン濃度調節だけではなく、種子発芽時における貯蔵脂質の分解及びその利用に寄与することを発見した。 これまでに得られた代謝データの解析を完了させ、当初の研究実施計画に基づいてトランスクリプトーム解析に着手している。現在、予備実験として少数のサンプルを用いたマイクロアレイ解析が完了しており、RNA-seq解析を計画通りに進めている。 以上から、本研究は当初の目的及び実施計画に従っておおむね順調に遂行している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題と令和2年度の成果をふまえ、今後以下のように研究を推進する。 (1)GC-MS/MSによるワイドターゲットメタボロミクスの分析対象は有機酸や糖などの中央代謝に分類される代謝産物が主であり、植物特化代謝産物の検出には不向きである。そこで、さらなる鍵代謝産物候補の同定に向けて、液体クロマトグラフィー質量分析装置とGC-MS/MSを用いたマルチプラットフォームメタボローム解析を行い、fugu5における代謝ネットワークの全体像の解明を目指す。 (2)RNA-seqを用いた経時的なトランスクリプトーム解析を進め、fugu5における遺伝子発現変動を明らかにした上で、メタボロームデータと合わせたトランスオミクス解析を行い、内生代謝プログラムに寄与する鍵遺伝子候補の同定を試みる。 (3)得られた研究成果を速やかに取りまとめ、学術論文や学会発表等で報告する。
|
-
-
[Presentation] MpPGDH-mediated serine synthesis is essential for plant growth in the dark and for sexual reproduction in Marchantia polymorpha2020
Author(s)
Mengyao Wang, Hiromitsu Tabeta, Kinuka Ohtaka, Ayuko Kuwahara, Kiminori Toyooka, Mayuko Sato, Mayumi Wakazaki, Hiromichi Akashi, Yoriko Matsuda, Takayuki Kohchi, Ryuichi Nishihama, Ali Ferjani, Masami Yokota Hirai
Organizer
第62回日本植物生理学会年会
-
-