2021 Fiscal Year Annual Research Report
金属カルベン反応に立脚したアミド化学の新展開と生物活性分子の合成
Project/Area Number |
20J20933
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
橋本 佳典 千葉大学, 医学薬学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | インドール / 生物活性天然物 / アルカロイド / 多様性指向型合成 / 不斉合成 / 酵素反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
インドール縮環型アザビシクロ環システムは、生物活性天然物や医薬分子に頻出の構造であるため、これまでに合成研究が盛んに行われてきた。しかしながら、報告された合成法の多くはキラルプール法や不斉補助基を利用した標的指向型合成法であり、これら天然物を網羅的に合成する手法は確立されていない。 以上の背景の下、所属研究室で開発された金属カルベンのアミド挿入反応及び酵素触媒を用いた不斉非対称化反応を鍵反応とした、インドールアルカロイド群の多様性指向型合成法の確立を計画した。検討の結果、原料から5ステップで合成した金属カルベン前駆体に対し、アミド挿入反応条件を適用することで目的のコア骨格であるアザビシクロ[3.3.1]骨格を構築した。その後酵素触媒を用いて、対称ジアセテートの不斉非対称化反応を検討した。検討初期は、反応性の低さや過剰反応の進行など多数の問題があったが、網羅的に条件検討した結果、トルエンと酢酸エチルの混合溶媒を使用した結果、反応性の向上及び過剰反応の抑制に成功し、高収率・高エナンチオ選択的にキラルアザビシクロ化合物の合成に成功した。最後に誘導体化を行い、合成経路終盤にフィッシャーインドール合成を適用することで、様々な置換基を有するインドール縮環型アザビシクロ化合物を合成した。これら化合物は、インドールアルカロイドの既知中間体として知られ、現在までに15種類以上の天然物の形式不斉合成を達成している。また、この合成法を用いれば非天然型のインドールアルカロイド誘導体の合成も可能であるため、創薬科学研究における波及効果も期待できると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であった、インドールアルカロイド群の多様性指向型合成法の確立を達成したため、概ね順調に進展していると言える。鍵反応であるアミド挿入反応に関しても網羅的に検討を行い、銅触媒及びロジウム触媒でのみ反応が進行することを確認した。もう1つの鍵反応である不斉非対称化反応に関しては、研究当初、反応性の低さと過剰な加水分解反応の進行により低収率に留まっていた。そこで酵素反応において一般的に検討される、酵素量やpHなど様々なファクターを検討したが、反応性の改善には至らなかった。しかし有機溶媒を検討した結果、用いる有機溶媒の種類によって反応性や選択性が大きく異なることが明らかとなった。その後最適化を行い、トルエンと酢酸エチルを混合溶媒として用いることで、反応性の改善及び過剰反応の抑制に成功し、73%収率、97%eeにて目的物を得ることに成功した。その後の誘導体化に関しても最適化を行い、収率の向上及び短工程化に努めた。最後に最終生成物の旋光度を測定した結果、先行研究に記載の旋光度の符号と一致したことから、天然物と同じ絶対立体配置であることも確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
このテーマに関しては、合成したインドールアルカロイドの生物活性試験を行い、インドール上の置換基と生物活性の相関を明らかにする予定である。その後これらのデータを取りまとめ、論文に投稿する予定である。次のテーマとして、以前行っていた金属カルベンの新規挿入反応の開発の際に偶然生成した、ウレア構造を有するアンモニウムイリドについて研究を行う予定である。本骨格を有するアンモニウムイリドの報告例は1 例のみであり、化学的性質に研究の余地がある。本化合物はその後の官能基変換により、様々な渡環式骨格へと誘導可能だと考えられるため、合成したアンモニウムイリドに対して求核反応条件および転位反応条件を適用し、ねじれ型ウレア化合物の合成を目指す。ねじれ型ウレア化合物もこれまでに合成例が少なく、また本化合物の化学的及び物理的性質は未開拓領域である。高度にねじれたアミド結合はケトンとアミド、双方の化学的性質を有することが知られており、“アミノケトン”と呼ばれる。同様に官能基の性質を予測すれば、ねじれ型ウレアは“アミノアミド”として新しいカルボニルの反応性を示すことが期待される。
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Remarks |
共同研究先ホームページ https://wwwhomes.uni-bielefeld.de/oc1-groeger/HG/group.html
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Research Products
(2 results)