2020 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属酸化物/2次元層状物質ファンデルワールス構造・機能インテグレーション
Project/Area Number |
20J21010
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
玄地 真悟 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 遷移金属酸化物 / 強相関電子系 / 2次元層状物質 / 金属-絶縁体相転移 / マグネタイト / 六方晶窒化ホウ素 |
Outline of Annual Research Achievements |
3d軌道に電子を有する遷移金属酸化物の一種であるFe3O4(マグネタイト)は高スピン偏極率を有するハーフメタル材料であり、860 Kもの高キュリー温度や抵抗・磁化率が大幅に変化する金属-絶縁体相転移(フェルベー転移)を示すため、薄膜成長によりスピントロニクス等のデバイス応用展開が期待されている。本研究では、各層がファンデルワールス相互作用により結合した2次元層状物質を薄膜成長基板として採用し、新奇ヘテロ構造の作製およびファンデルワールス相互作用を活用した格子ミスマッチに依らない薄膜成長の実現を目指している。今年度は、Fe3O4薄膜を絶縁性・化学的安定性に優れる単原子層誘電体の六方晶窒化ホウ素(hBN)上で結晶成長させ、その結晶性および相転移特性を評価した。 hBNフレークをバルク単結晶からスコッチテープによりMgO(100)基板上に機械剥離後、パルスレーザー堆積法によりFe3O4薄膜の成膜をした。結晶性評価は、ラマン分光法と原子間力顕微鏡により格子振動モード及び表面形状の評価を行った。その結果、Fe3O4の明瞭なラマンピークの観測よりFe3O4薄膜の成長を確認し、さらに薄膜表面は平均サイズ数十 nmのグレイン構造を有することも明らかにした。続いて、Fe3O4/hBNをエッチングによりマイクロ細線を形成後、2端子電極を蒸着することで電気伝導特性を評価した。その結果、hBN上のFe3O4薄膜は116 K付近でのフェルベー転移を伴う抵抗変化を示すことを明らかにした。今後は、相転移特性の膜厚依存性および結晶成長方向等を解析し、成長様式を詳細に調べる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、hBN上においてフェルベー転移を示すFe3O4薄膜の成長に成功し、その物性評価を行えた点から、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
遷移金属酸化物/2次元層状物質の積層構造は、ファンデルワールス相互作用により容易に種々の材料上に転写することが可能である。この性質を活用すれば、Fe3O4/hBN積層構造においても、他材料上に貼り付けた新奇デバイスを作製できる可能性を大いに秘めていると期待でき、今後はデバイス応用展開を探索する計画である。
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Research Products
(2 results)