2021 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属酸化物/2次元層状物質ファンデルワールス構造・機能インテグレーション
Project/Area Number |
20J21010
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
玄地 真悟 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
|
Keywords | 遷移金属酸化物 / 強相関電子系 / 2次元層状物質 / 金属-絶縁体相転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では遷移金属酸化物の薄膜成長における格子不整合を無視可能なユニバーサル基板としての六方晶窒化ホウ素(hBN)の可能性を検討している。hBN上でこれまで二酸化バナジウム(VO2)とマグネタイト(Fe3O4)の薄膜成長を試みており、Fe3O4/hBNとVO2/hBNのそれぞれについて以下の2点を調べた。 [1] hBN上Fe3O4薄膜の詳細な結晶成長方向や相転移特性 透過型電子顕微鏡による観察の結果、Fe3O4はhBN(001)面に対して表面最安定の(111)面が積層していることが分かった。本成長面とhBNは最低でも25%もの格子不整合を有するが、過去のVO2/hBNにおいても最低10%もの格子不整合に関わらず薄膜成長が実現した結果と併せると、hBNのユニバーサル基板としての可能性を高めるものである。さらに、Fe3O4/hBNの相転移特性のFe3O4膜厚依存性も調べたところ、膜厚35 nmから240 nmまで変化させても同様の相転移特性を観測し、その転移温度はわずか4 Kしか変化しなかった。これは、Fe3O4/hBNでは残留歪みや格子欠陥の影響が小さいことを示唆する。 [2] hBN上VO2薄膜のドメインサイズ同定 VO2は金属-絶縁体相転移を起こす際に、ドメインと呼ばれる空間的領域が不均一に相転移を起こす。このドメインサイズは相転移特性を決める重要なパラメータであり、ドメインサイズの同定は素子作製への重要な指針となる。本研究では光学顕微鏡により、温度を変化させた際にVO2/hBNの相転移のその場観察に成功し、VO2のドメインサイズは平均約500 nmと見積もられた。これは、一般的なVO2/Al2O3と比較すると1桁程度大きく、マイクロスケールでも急峻な抵抗変化が得られることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究が志向するhBN上の自由自在な薄膜成長という点では、hBN上で格子定数・結晶構造も異なる2例の薄膜成長を実現し、その薄膜の相転移特性を詳細に評価できた。さらにVO2に関しては相転移の基本単位である金属ドメインサイズの同定も行えたことで、素子応用展開への指針を示すことができた。以上の点より、本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究において使用している単結晶より機械剥離したhBNフレークは、最大でも大きさが100 um程度であり通常のX線回折評価や大面積での素子加工が困難である。この問題の解決として、今後は化学気相成長法(CVD法)によるhBNシートの積極的な活用を行う予定である。
|
Research Products
(6 results)