2021 Fiscal Year Annual Research Report
一酸化窒素によるアミノ酸センサーGCN2活性化を介した神経細胞死惹起機構の解明
Project/Area Number |
20J21060
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
藤河 香奈 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
|
Keywords | 一酸化窒素 / S-ニトロシル化 / 小胞体ストレス応答経路 / アミノ酸センサーGCN2 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢化に伴い、神経変性疾患の罹患率が上昇しており、その根本治療薬の開発が喫緊の課題となっている。神経変性疾患において、神経細胞死を引き起こす経路は多様であり、その原因も様々である。本研究では、加齢や環境ストレスにより産生される一酸化窒素(Nitric oxide: NO)と小胞体ストレス応答経路に着目し、研究を行っている。小胞体ストレス応答経路を活性化するeIF2aキナーゼは、現在までに哺乳類細胞では4種(GCN2, HRI, PERK, PKR)報告されている。これまでの研究から、一酸化窒素はGCN2を介して小胞体ストレス応答経路を活性化することを見出していたため、当該年度は、NOによるGCN2活性化の詳細な分子メカニズムを明らかにすることを目的とした。具体的には当該年度は以下の3つを重点的に取り組んだ。 【1.NO誘導性GCN2活性化を介したCHOP mRNAの発現誘導】WT マウス胎児線維芽細胞(MEF)細胞とGCN2 KO MEF細胞を用い、NO刺激下でのCHOP mRNA発現をReal-time PCRにより評価した。その結果、WT MEFと比較してGCN2 KO MEF細胞では、NO誘導性のCHOP mRNA発現が抑制された。 【2.GCN2上流のNO標的分子の同定】前年度に見出していた候補タンパク質について、ヒト神経芽細胞腫(SH-SY5Y)にNOドナーを処理した後、NOによる酸化修飾特異的検出法であるビオチンスイッチ法に供した。その結果、GCN2上流で働く2つのNO標的タンパク質の同定に成功した。 【3.NO標的タンパク質の酵素活性変化の検出】2.にて、GCN2上流で働く候補タンパク質がNOにより修飾を受けることが明らかとなったが、その酵素活性に与える影響は不明であったため、本実験に取り組んだ。現在、2.で同定した候補タンパク質のうち、1つにおいてNO刺激により酵素活性が低下することを確認している。今後は、もう1つの候補タンパク質の酵素活性についても解析を進めていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度までに、一酸化窒素(Nitric oxide: NO)により小胞体ストレス応答経路GCN2-eIF2aが活性化することを見出していた。そのため、当該年度は、最下流である細胞死誘導因子CHOPの発現変化を、Real-time PCRにより評価した。その結果、WTに比較してGCN2 KO細胞において、NO誘導性のCHOP mRNA発現が顕著に抑制されていた。このことから、NOによる小胞体ストレス応答経路を介した細胞死には、GCN2の寄与が大きいことが予想される。 上記の実験から、NOによりGCN2が活性化し細胞死が誘導されることが示唆されたが、GCN2活性するメカニズムは明らかではないため、その詳細な分子機構の解明に取り組んだ。まず、GCN2上流に位置する候補タンパク質について、NOによる酸化修飾(S-ニトロシル化)特異的検出法であるビオチンスイッチ法を用い、S-ニトロシル化を受けるか確かめた。その結果、2つのNO標的タンパク質の同定に成功した。 次に、同定したNO標的タンパク質がS-ニトロシル化を受けることにより酵素活性が変化するか検証することとした。現在、同定したNO標的タンパク質のうち、1つにおいてNO刺激により酵素活性が低下することを確認している。今後は、もう1つの候補タンパク質の酵素活性についても解析を進めていく予定である。 当該年度の研究から、培養細胞における一酸化窒素によるGCN2を介した小胞体ストレス応答経路の活性化が細胞死を引き起こす分子メカニズムの一端が明らかとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
当該年度までの研究により、培養細胞における一酸化窒素によるGCN2を介した小胞体ストレス応答経路の活性化が細胞死を誘導する分子メカニズムを解析することが出来た。しかし、同定した2つのGCN2上流に位置するNO標的タンパク質のうちの1つについて,まだ酵素活性測定が行えていないため、今後解析を行う予定である。上記の酵素活性測定が終わり次第、NOが脳内で産生されることが知られている疾患モデルマウスを用い以下の実験を予定している。 1.疾患モデルマウスの脳組織を用い、培養細胞での検討により同定に成功していた2つのGCN2上流に位置するNO標的タンパク質がS-ニトロシル化を受けているかを、ビオチンスイッチ法により検討する。 2.疾患モデルマウスの脳組織を用い、GCN2やeIF2aのリン酸化レベルをウエスタンブロット法により解析する。 3.疾患モデルマウスの脳組織から抽出したRNAを用い、CHOPの発現量をReal-time PCRにより評価する。 これらの実験を遂行後、これまでの成果をまとめ英文原著論文として投稿する。また、学会発表も積極的に行う予定である。
|
Research Products
(2 results)