2020 Fiscal Year Annual Research Report
がん幹細胞のタンパク質分解系を標的とした革新的抗がん剤創成の基礎研究
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20J21092
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
平岩 茉奈美 岐阜薬科大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 膠芽腫 / がん幹細胞 / SMURF2 / リン酸化修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
膠芽腫(GBM)は、あらゆるがんの中で最も予後不良の中枢神経系腫瘍であり、根本的な治療法の開発が望まれている。近年、「がん幹細胞の幹細胞性」と「がんの病態」に緊密な関連性が示されており、GBMの発症・進展や抗がん剤・放射線に対する抵抗性においても、グリオーマ幹細胞(GIC)の幹細胞性維持機構が重要な役割を担うことが報告されている。我々はこれまでに、SMURF2のリン酸化修飾(SMURF2T249)が、TGF-βシグナルによるGICの幹細胞性維持機構とグリオーマ進展制御機構において重要である可能性を見出している。そこで本研究では、「SMURF2リン酸化修飾によるGICの幹細胞性調節機構」を解明し「がん幹細胞のSMURF2T249を標的とした抗がん剤開発の基盤確立」を目指す。 本年度は、SMURF2T249変異体導入による幹細胞性の変化をもたらす原因を同定するため、細胞死の検討を行った。さらに、ヒト病理検体を用い、ヒトにおけるグリオーマの進展度とSMURF2のリン酸化修飾との相関性を検討した。その結果、SMURF2T249変異体導入GICにおけるAnnexin V(+) PI(-) 細胞の割合について、各群間で有意な差は見られなかった。このことから、SMURF2T249変異体導入によるヒトGICの幹細胞性の変化は、細胞死に起因しないことが確認された。さらに、ヒトグリオーマ病理検体において、悪性度に応じSMURF2T249のリン酸化が低下すること、特に、悪性度の高いGrade Ⅲ, ⅣにおいてSMURF2T249のリン酸化が有意に低下することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果より、SMURF2T249リン酸化修飾によるヒトGICのスフィア形成能の変化は、細胞死に起因しないことが確認された。さらに、ヒトグリオーマにおいて、悪性度に応じSMURF2T249のリン酸化が低下することが明らかとなった。 このことから、本年度の目標であった「SMURF2のリン酸化修飾によるグリオーマ進展制御のメカニズム」の一部と、「ヒトにおけるグリオーマ進展度とSMURF2のリン酸化修飾との相関性」の解明が達成されたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、「SMURF2のリン酸化修飾によるグリオーマ進展制御のメカニズム」の全容解明を目指し、以下の検討を実施する。SMURF2の標的タンパク質を中心に、ヒトGICへのSMURF2T249の変異体導入により発現が変動する因子を、western blotting法により探索する。その候補因子の中から、「SMURF2下流のグリオーマ進展に関与する責任因子」の同定を試みる。さらに、機能阻害型のレスキュー実験として、SMURF2T249の変異体を導入したTGS-01細胞に候補因子のshRNAを用い、スフィア形成能(in vitro)、免疫不全マウスへの移植による腫瘍形成能(in vivo)を測定する。
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