2020 Fiscal Year Annual Research Report
Identification of trace bioactive lipid, phosphatidic acid molecular species: approaching physiological significance of lipid diversities
Project/Area Number |
20J21133
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
星野 史規 千葉大学, 融合理工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | ホスファチジン酸 / 多価不飽和脂肪酸 / synaptojanin-1 / パーキンソン病 / ジアシルグリセロールキナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
Synaptojanin-1 (SYNJ1) は調べたリン脂質の中でホスファチジン酸 (PA) と最も強く相互作用した。さらに、PA分子種の中でも18:0/20:4-PAや18:0/22:6-PAなどの多価不飽和脂肪酸 (PUFA)-PA分子種と選択的に強く相互作用した。また、PUFA-PAはSYNJ1のSAC1ドメインを介して相互作用し、そのD4-ホスファターゼ活性を選択的に亢進した。従って、PUFA-PAは脳においてSYNJ1を選択的に標的としてD4-ホスファターゼ活性の活性化因子として機能することが強く示唆された。 SYNJ1欠損マウスは、脳においてPI(4,5)P2が顕著に蓄積し、本マウスは85%以上が出生後24時間以内に死亡した。さらに、SYNJ1のD4-, D5-デュアルホスファターゼ活性はクラスリン仲介型エンドサイトーシスの制御に必須である。興味深いことに、若年性パーキンソン病 (EOP) の原因遺伝子 (PARK20) としてSYNJ1が同定されており、PARK20の遺伝子変異はSYNJ1のD4-ホスファターゼ活性を減弱させる。従って、SYNJ1は正常な脳機能の維持において必須である。以上より、我々は、SYNJ1のD4-ホスファターゼ活性を亢進するPUFA-PA分子種が脳において重要な役割を担う可能性を示したと考える。 DHAなどのPUFAは脳機能を亢進することが知られているが、その詳細な生理機能については不明点が多い。本研究は、PUFAを含有するPA分子種がSYNJ1を標的にすることで脳機能を亢進する可能性を示し、PUFAと脳機能亢進との生理学的関連性を結び付ける可能性のある一つの経路を提示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題において、本年度はホスファチジン酸分子種とsynaptojanin-1についてin vitroでの機能連関を解明することを目標にして、研究を行ってきた。結果として、多価不飽和脂肪酸を含有するPA分子種 (PUFA-PA) とsynaptojanin-1が選択的に相互作用することで本タンパク質の機能を亢進すること示した。さらに、本年度の研究成果を以下の形で報告した。 (1) 筆頭著者として国際誌に論文を投稿・受理 (筆頭は2報目) (2) アメリカ生化学・分子生物学会に講演者として招待され、口頭発表を行なった。 (3) 現在3報目の筆頭著者論文を国際誌に投稿中 従って、本研究課題の進捗状況を上記のように判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、翌年度はPUFA-PAとsynaptojanin-1との機能連関を細胞レベルで検証していく。具体的には、種々のPA産生酵素 (DGKs, PLD, LPAAT) との細胞内局在、それぞれのPA産生酵素によって供給されるPA分子種によって細胞内のsynaptojanin-1活性が亢進するのか否かについてを最優先で検証する。 また、PUFA-PA分子種と選択的に相互作用するタンパク質の候補として新たにAP180を同定した。本タンパク質はsynaptojanin-1と同様にクラスリン仲介型エンドサイトーシスに関与するタンパク質で、synaptojanin-1と同様にPUFA-PAと機能的に連関する可能性が考えられる。そこで、AP180とPUFA-PAとの機能連関についても検証を行っていく。
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