2021 Fiscal Year Annual Research Report
正標数関数体上の超越数論:Mahler関数と4指数問題
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20J21203
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
井手 春希 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 超越数 / 代数的独立 / Mahler関数 / 線形回帰数列 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)前年度より執筆していた、任意の個数の変数を持つ或る複素整関数とその任意の階数の偏導関数の代数点における値の代数的独立性に関する研究論文に関して、その証明を改善し執筆を終えた。当該論文で扱う関数は、「乗法的独立」という条件を満たす複数個の代数的数、及び線形回帰数列によって生成される。現在、当該論文を査読付き学術誌に投稿中である。 (2)今年度の新たな研究成果として、或る種のLambert型級数、冪級数、および無限積によって定義される複素解析関数の族を考察し、それらの関数や導関数の代数的数における値からなる無限集合が代数的独立となるための必要十分条件を決定した。そのような必要十分条件は、関数の族を生成する複数個の代数的数の「対ごとの乗法的独立性」として記述される。複数個の代数的数が対ごとに乗法的独立であるという条件は、それらが単に乗法的独立であるという条件より弱い条件であり、上記(1)の結果と比べ具体例の構成が極めて容易である。本結果の証明はMahler関数の理論に基づき、最終的に或る多変数有理関数の1次独立性へ帰着される。本研究の特筆すべき点は、証明の最終段階において変数の特殊化を行わず多変数有理関数のまま扱うことで「対ごとの乗法的独立性」という条件を効果的に利用できることを見出した点である。これは、関連する先行研究において変数の特殊化が行われ問題が1変数有理関数の1次独立性へと帰着されたことと状況を異にしている。この成果をオンライン集会「Darfセミナー」にて口頭発表した。さらに現在、査読付き学術誌への投稿を目指し論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要欄(2)で述べたように、本年度に得られた成果自体は新規性のあるものであった。一方、その成果を論文としてまとめる作業に遅れが生じている。そのため「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、研究実績の概要欄(2)の成果を論文として執筆し、査読付き学術誌に投稿する。また、当該結果の証明において研究代表者が用いた手法は関連分野の先行研究に見られないものであるため、この手法を用いて更なる新しい結果の証明を試みる。
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Research Products
(3 results)