2020 Fiscal Year Annual Research Report
Analyses of the physiological effects of REM sleep focusing on depression
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20J21209
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
安垣 進之助 筑波大学, 人間総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 睡眠 / マウス / うつ病 / ストレス / 遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々の睡眠は,レム(rapid eye movement: REM)睡眠とノンレム(non-REM)睡眠にわけられる。このうちレム睡眠は、高次な脳構造をもつ動物に固有の現象であり、鮮明な夢を生じる睡眠段階として知られる。しかし、その生理的意義については、ノンレム睡眠と比べ、わかっていないことがはるかに多い。そこで、レム睡眠の機能を解明するための端緒として、うつ病に着目した。現在まで、レム睡眠がストレスの軽減やうつ病の予防において有益なのか有害なのかについては、科学的に解明されていない。本研究では、レム睡眠の人為的な増加/減少がうつ病のマウスモデルにもたらす作用について明らかにすることを目指してきた。本年度はまず、慢性ストレス曝露下のマウスに対し、継続的にレム睡眠を増加させて生じる影響を検証した。研究代表者の所属研究室では、マウスの脳幹においてレム睡眠を強く促進する神経細胞が同定されている(柏木ら、未発表)。今回は、その神経細胞を標的とし、DREADDとよばれる化学遺伝学的手法を繰り返し適用することで継続的なレム睡眠増加を試みた。行動課題によりマウスの表現型を評価した結果、レム睡眠増加群では、対照群と比べ、ストレス誘発性の行動表現型が異なることが示唆された。さらに、レム睡眠増加の継続期間を延長/短縮、あるいは前後にシフトさせた場合についても検証も進めており、すでに重要な予備的データが得られている。なお、レム睡眠の人為的な減少がもたらす作用の解析については、現在、継続的なレム睡眠減少のための最適な手法を慎重に検討しているところである。手法が決定し次第、うつ病のマウスモデルにもたらす作用の検討をおこなう予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、レム睡眠の人為的な増加がうつ病のマウスモデルにもたらす作用についての検討を進めることができた。その結果、レム睡眠増加群では、対照群と比べ、ストレス誘発性の行動表現型が異なることが示唆された。また、レム睡眠増加の継続期間やそのタイミングの重要性についての検討も進んでおり、すでに重要な予備的データが得られている。今後、様々なアプローチによってこの予備的データについての検証を進めていくことで、ストレス対処における睡眠の役割について画期的な成果を得られるものと期待される。したがって、本年度は計画通りに研究が進み、おおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、本年度までに、レム睡眠の人為的な増加がうつ病のマウスモデルにもたらす作用についての解析が順調に進んでいる。このことをふまえ、次年度は、申請書記載の研究計画をさらに発展させ、うつ病の発症とレム睡眠をつなぐ神経回路の同定へ迫っていく。具体的には、レム睡眠操作群と対照群との間でストレスへの応答性に差のある脳部位を探索する。さらに、光遺伝学的手法や複数の行動課題を用いることで、人為的なレム睡眠操作が、その脳部位の興奮/抑制が直接的にかかわっているかについても検証していく。
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