2021 Fiscal Year Annual Research Report
Analyses of the physiological effects of REM sleep focusing on depression
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20J21209
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
安垣 進之助 筑波大学, 人間総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 睡眠 / マウス / うつ病 / ストレス / 遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々の睡眠は、レム(rapid eye movement: REM)睡眠とノンレム(non-REM)睡眠にわけられる。このうちレム睡眠は、高次な脳構造をもつ動物に固有の現象であり、鮮明な夢を生じる睡眠段階として知られる。しかし、その生理的意義についてはほとんどわかっていない。本研究では、レム睡眠の生理的作用を解明するための端緒としてうつ病に着目し、レム睡眠がストレスの低減やうつ病の予防において有益なのか有害なのかという議論について検証してきた。具体的には、①人為的なレム睡眠操作が慢性ストレス曝露下のマウスの行動にもたらす作用について検討するとともに、②人為的レム睡眠操作がもたらす細胞レベル・分子レベルでの変化についても解析を試みてきた。採用者は、前年度までに、レム睡眠増加群では、対照群と比べ、ストレス誘発性の行動表現型が異なることを明らかにしている。本年度は、人為的レム睡眠増加の適用期間を延長/短縮、あるいは前後にシフトさせた場合について検証した。その結果、ストレス誘発性の行動表現型が異なる背景には、レム睡眠増加の期間とタイミングが重要であることが示唆された。また、上記の現象の記憶との関連についても検討を進め、レム睡眠操作の影響が記憶学習能力への影響のみでは説明しにくいことを支持するデータを得ることができた。さらに、人為的レム睡眠増加がどのようにして行動表現型の違いを生み出したかを解き明かすため、レム睡眠とうつ病発症とをつなぐ神経基盤の解明を試みた。具体的には、レム睡眠中に活動が高まることが知られている脳部位に対し、光遺伝学的な手法を用いてレム睡眠特異的に介入した。現在までに、一定の効果があることを示唆する予備的データが得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、前年度に採用者が発見した、レム睡眠増加群では、対照群と比べ、ストレス誘発性の行動表現型が異なるというポイントについてさらなる検証を進めることができた。その結果、ストレス誘発性の行動表現型が異なる背景には、レム睡眠増加の期間とタイミングが重要であることが示唆された。また、レム睡眠操作の影響が記憶学習能力への影響のみでは説明しにくいことを支持するデータも得ることができた。さらに、人為的レム睡眠増加がどのようにして行動表現型の違いを生み出したかについても検討を進めた。具体的には、レム睡眠中に活動が高まることが知られている脳部位に対し、光遺伝学的な手法を用いてレム睡眠特異的に介入した。現在までに、一定の効果があることを示唆する予備的データが得られている。したがって、本年度は計画通りに研究が進み、おおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までに、レム睡眠増加群では、対照群と比べ、ストレス誘発性の行動表現型が異なるというポイントについて、詳細な検証を進めてきた。次年度は、その最終段階として、化学遺伝学的手法に用いるリガンドそのものや、繰り返し行われる腹腔内投与それ自体が、上記の行動表現型に影響を及ぼしていないことを確認する計画である。 また、現在までに、光遺伝学的手法を用いたレム睡眠特異的な介入により、人為的レム睡眠増加がどのようにして行動表現型の違いを生み出したかを明らかにしていく上で重要な予備的データも得られている。次年度も、このデータについての検証を引き続き進め、うつ病の発症とレム睡眠をつなぐ神経基盤の解明へ迫っていく。
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