2020 Fiscal Year Annual Research Report
Evaluating sediment dynamics within watersheds by hydrogeomorphic approaches for measures against earthquake-related multiple disasters
Project/Area Number |
20J21265
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
荒田 洋平 東京農工大学, 大学院連合農学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
|
Keywords | 複合災害 / 地震後の流域土砂動態 / 斜面崩壊 / 堆積土砂 / 水流出 / 土砂流出 / GIS解析 / 2018年北海道胆振東部地震 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年では、地震後の豪雨に伴う複合的な土砂災害の対策が課題となっている。複合土砂災害の対策では、斜面→河道および上流→下流への流域一貫の視点による水と土砂の移動評価から流域土砂動態を解明する必要がある。そこで、本研究は2018年北海道胆振東部地震により崩壊が多発した頗美宇川流域内(40km2)で実施し、(1)リモートセンシングデータのGIS解析による広域堆積土砂評価を実施し、崩壊量が異なる複数の小流域内(1ha程度)を対象に、(2)降雨に対する水流出量の応答、(3)水流出に対する土砂移動量の評価を実施することを目的とした。これらから、不安定な堆積土砂が移動を開始するタイミングや移動量・発生箇所を明らかにし、地震後の災害対策に向けた警戒避難の基準や土砂氾濫域の推定などに対する科学的基礎資料を提供する。 2020年度前半は、地震による崩壊と堆積土砂の関係性を、対象流域内の277小流域(0.01~4.4km2)を対象に地震後の空間情報(0.5mDEMと0.2mオルソ画像)を用いたGIS解析から評価した(目的1)。これらから、堆積土砂量は、崩壊量の増大に伴い、増大する傾向が示された。一方で、0.5km2以下の流域では、崩壊量が大きいのにも関わらず、堆積土砂量が少ない箇所も認められた。このような流域間での堆積土砂量の違いは、流域ごとの崩壊の発生しやすさの違いに加え、崩壊土砂の移動性の違いによるものと考えられた。これらの評価から、観測流域(1ha程度)を選定し、2020年度10月から水と土砂の流出量観測を開始した(目的2、3)。降雪後に降雨(10mm/日)が発生した期間の観測から、観測流域間で、流出した土砂量が10倍程度異なった。このような違いについて、流域内の崩壊量と降雨に対する水流出量から評価していく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2020年度は新型コロナ感染症対策での活動が制限される中、様々な研究活動で独自の工夫を行うことで、研究成果をあげるとともに、研究者ネットワークの構築・拡大を進めた。特に、本年度前半には、熊本地震における斜面の亀裂形成と土壌特性の評価を国際学術誌(Geoderma)にまとめ、本年度10月に掲載された。これは、北海道胆振東部地震における水流出と土砂移動評価とも関連し重要な成果となった。また、GIS解析から地震後の水文・地形プロセスにおいて重要となる広域堆積土砂評価を行うとともに、観測流域選定などを綿密に行うことことができ、2020年10月に観測を開始できた。本年度後半には、当該分野に精通している研究者との、現地観測や分析に関する意見交換を実施し、掃流土砂や浮遊土砂など多様な土砂観測の実施を検討でき、さらには次年度のEGU2021や砂防学会、さらにGeophysical Research Lettersなどへの国際共著に向けた新たな解析アイデアを創出した。 さらに、自身の研究分野のみのならず多様な学際領域の若手研究者ネットワークの構築にも力を注ぎ、2020年12月18日に、ワークショップ「人と自然の相互関係からみた災害とその対策」を開催した。本ワークショップは私を中心に、東北大学と東京農工大学の卓越大学院の連携で実施され、両プログラムの学生6名で企画・運営した。その結果、本課題が目指す災害対策では欠かせない地域の防災文化への理解や研究成果の社会実装などを学ぶとともに、学際的な視点やリーダーシップを養うことができた。これらの内容を砂防学会誌に投稿し、2021年4月に受理されている。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、前年度と同一に、崩壊面積率(総崩壊面積/流域面積)が異なる3流域(1ha程度)で流量と流出土砂量のモニタリングを継続して実施する。前年度の10~11月の観測結果では、崩壊面積率が大きいほど、流出土砂量も多くなる傾向が確認された。本年度は、さらに観測データを蓄積するとともに、水流出特性と流出土砂量の関係性を明らかにしていく。特に、流量の増加やピーク流量、逓減など流出波形から、崩壊面積率に対する3流域の降雨ー流出特性の違いについて評価する。 具体的には、5~12月まで月ごとに定期流量・土砂量観測を実施し、出水ごとにも実施する。定期流量観測による水位ー流量曲線と、水位計の連続水位データから、ハイドログラフを作成する。また、出水時の流量観測は困難であるため、既存の推定式と連続水位データから、流量を推定する。斜面プロットや量水堰内で補足された土砂は、実験室に持ち帰り、乾重量や体積を分析し、ピーク流量や流量増加に対する流出土砂量の特徴を3流域で比較する。また、粒度分析も実施し、どのような粒径が選択的に流出しているのかを評価する。8月には、GIS解析による頗美宇川流域内の広域堆積土砂量評価について、Geophysical Research Lettersに投稿する。2月には、崩壊面積率が異なる流域における降雨流出特性と土砂移動量に関する研究成果をEarth Surface Processes and Landformsに筆頭著者として投稿する。
|