2021 Fiscal Year Annual Research Report
電気化学的手法により精密制御した分子鋳型を内包する半導体バイオセンサの創製
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20J21302
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
檜森 匠吾 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | バイオセンサ / 電気化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は導電性ポリマーを材料としたハイドロゲルを作製し、その電極応用に向けた研究を行った。分子鋳型を内包する半導体バイオセンサの開発には、分子鋳型を内包するために柔軟性をもった電極材料を使用する必要があり、導電性をもった有機材料である導電性ポリマーが適していると考えられる。導電性ポリマーを材料としたハイドロゲルを作製し体積を増加させることで、生体液の流入を阻害しないままより多くの分子鋳型を内包することが可能になるが、一般に導電性ポリマーは脆いため自立するゲルを作製することができず、体積の増加に制限があった。そこで、柔軟な有機材料と導電性ポリマーを混合して重合を行うことで自立可能な導電性ゲルを作製し、バイオセンサの電極としての応用可能性を検討した。結果として、作製されたゲルは有機材料特有の柔軟性を有しながら、溶液中であっても形状を保つ自立ゲルとなることが示された。また、生体低分子であるグルコースと選択的に結合するフェニルボロン酸を内包した導電性自立ゲルは、溶液中のグルコース濃度に対応した電位応答を見せたことから、導電性自立ゲルのバイオセンサ応用への可能性が示されたといえる。また、柔軟な有機材料と導電性ポリマーの混合割合を変えることでグルコースに対する応答性が変化したことから、導電性自立ゲルをバイオセンサの電極として使用する際に最適なパラメータについて考察を行った。本内容は学術論文としてまとめられ、RSC Advances誌に掲載されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子鋳型を内包した半導体バイオセンサの開発には、分子鋳型を内包可能な電極材料を選定することが不可欠である。このとき、柔軟で生体適合性のある導電性ポリマーはバイオセンサの材料として適しているが、一般に脆く崩れやすいため自立するハイドロゲルを作製できず体積の増幅に限界があることから、十分な分子鋳型を内包させる際の課題となっていた。そこで、導電性ポリマーを柔軟な有機材料と混合して自立可能な導電性ハイドロゲルを作製した。生体低分子であるグルコースと結合性を持つフェニルボロン酸を内包した導電性自立ゲルは、溶液中のグルコースに電位応答を示したことから、導電性自立ゲルのバイオセンサへの応用可能性が示された。よって、導電性自立ゲルに分子鋳型を内包させることで、生体分子に対してさらに高い感度・選択性を持たせることが可能になると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまで研究を行ってきた導電性自立ゲルに分子鋳型を内包させることで、検出対象である生体分子への感度・選択性の検討を行っていく。現在、導電性自立ゲルに含まれているフェニルボロン酸によって生体低分子であるグルコースに対する選択性をもたせているが、このような分子認識部位を用いて分子鋳型を作製することでさらに高品質な分子鋳型が作製可能になる。このとき、高い分子選択性と合成の容易さから近年注目を集めているアプタマーを用いることを検討している。DNAなどによって人工的に合成されるアプタマーは理論上すべての分子に対して、特異的に結合する配列を作製することができるため、様々な対象分子に応用可能なセンサとなることが期待される。このように、導電性自立ゲル内部にMIPを精密に制御しながら作製し、半導体センサの電気特性の変化から対象分子の検出限界・ダイナミックレンジ・感度・選択性を評価することを計画している。
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