2021 Fiscal Year Annual Research Report
ヒレから四肢への進化における鰭条/指骨格のTuringパターン共通性の解明
Project/Area Number |
20J21314
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田中 祥貴 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 胸ビレ / 真骨魚類 / 形態進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は胸ビレ鰭条骨形成期における(1)Wnt・Bmpシグナル、および(2)Shh・Hox遺伝子の活性と機能に関する実験を行なった。(1)Wnt・Bmpシグナルに関してはそれぞれのresponsive elementを導入したトランスジェニックゼブラフィッシュの観察を行なった。しかし、このトランスジェニックゼブラフィッシュの蛍光が発生後期において全身で減衰してしまったこともあり、それぞれにおいて予想していたようなチューリングパターン様の発現パターンは観察されなかった。(2)Shh・Hox遺伝子に関しては昨年度CRISPR-Cas9によるノックインにて作製したshha, shhb, hoxa13b, hoxd13aの遺伝子領域にEGFPを導入したトランスジェニックゼブラフィッシュの胸ビレを観察した。その結果、Shhに関してはshhaとshhbで胸ビレ鰭条骨形成期における発現パターンが異なった。Shhの下流遺伝子として働くHoxに関してもhoxa13b, hoxd13aそれぞれの発現が胸ビレ鰭条骨形成期において発現を示した。これらの遺伝子の胸ビレ鰭条骨形成期の働きを明らかにするために2つのShh遺伝子のノックアウトを行ったところ、shha, shhbは機能分化を生じており、shhaは鰭条骨自体の形成を、shhbはその基部となる軟骨性骨領域の後方部の形成を担っていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画であった胸ビレの鰭条骨形成期にWnt・Bmpシグナルによるチューリングパターンを見出す試みはうまくいかなかった。これは昨年度に準備したresponsive elementがゼブラフィッシュ後期発生の活性をうまく捉えられないという技術的な問題から生じたのだと考えられる。しかし、これらの上流遺伝子であるShhにおいてこれまで観察されていなかった胸ビレ後期発生過程における機能分化を観察することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ゼブラフィッシュを含む真骨魚類では独自の全ゲノム重複を生じており、その影響で2つに重複したShh(shha, shhb)が機能分化を生じていたことは、この重複した遺伝子が今後の真骨魚類の胸ビレの形態進化を引き起こす可能性を示している。来年度はこれまでの胸ビレ鰭条骨形成におけるチューリングパターンを捉えるという試みから視野を広げ、胸ビレ骨格全体の形成に対するShh-Hox遺伝子の働きに焦点を移し、研究を進めていくことにする。
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