2020 Fiscal Year Annual Research Report
電気化学とOrgan-on-a-chipの融合によるがん腫瘍モデル評価基盤の構築
Project/Area Number |
20J21401
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
平本 薫 東北大学, 環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | スフェロイド / 呼吸活性 / 電気化学測定 / 電気化学発光 |
Outline of Annual Research Achievements |
三次元培養した細胞塊(スフェロイド)は生体に近い機能を持つため、モデル組織として移植医療や創薬への応用研究が推進されている。電気化学を利用した細胞組織評価基盤の確立のために、2つのアプローチをとった。①高度な生体組織モデルの作製および電気化学計測による機能評価と、②高解像度かつハイスループット測定を可能とする電気化学デバイスの開発である。 ①生体外で大きな細胞構造体を構築しようとすると、内部まで酸素や栄養素が供給されず細胞死が生じるという問題がある。細胞スフェロイドに血管構造を組みこむことで物質輸送が改善され、より生体組織の再現性が高まると考えられる。そこで血管内皮細胞と繊維芽細胞の共培養により血管様の細胞ネットワークを有するスフェロイドを作製し、走査型電気化学顕微鏡(SECM)および多点電極アレイデバイスを用いて、電気化学的な呼吸測定によりその機能評価を行った。作製したスフェロイドに、代表的な抗がん剤であるドキソルビシンを添加すると、血管内皮細胞の割合が大きいスフェロイドほど呼吸量が顕著に減少していることがわかった。血管構造によって薬剤浸透性が高まったことが示唆される。 ②代表的な電気化学測定ツールであるSECMは1本のプローブを走査するという特性上、高空間分解能であるがスループット性が低い。そこでスループットを向上させるアプローチとして、電気化学発光(Electrochemiluminescence: ECL)を利用した呼吸活性イメージングデバイスを作製した。1枚の平板電極上で酸素の還元と発光物質の酸化を交互に行うことで微小領域の酸素濃度を発光反応に変換するシステムを構築し、ミニ軟骨組織およびがん腫瘍モデルの複数同時の呼吸イメージングに成功した。ECLイメージングによってSECMと同程度の空間分解能を有しながら、スループット性を大幅に向上させることが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電気化学的な呼吸測定により、血管構造を有し高機能化した細胞スフェロイドの代謝評価を行い、血管構造の有無と薬剤代謝の関係を調査した。血管構造によってスフェロイドの薬剤感受性が高まったことが示唆され、電気化学計測が高感度な測定ツールであることを示すことができた[1]。また、スフェロイドの呼吸活性をハイスループットにイメージングする電気化学発光測定システムを構築し[2]、これらの成果を論文として公表することができた。 [1]K. Hiramoto et al., Electrochimica Acta, 340, (2020), 135979. [2]K. Hiramoto et al., Biosensors and Bioelectronics, 181, (2021), 113123.
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Strategy for Future Research Activity |
生体組織モデルのストレス応答や免疫応答に起因する活性酸素種(ROS)、活性窒素種(RNS)、および血管機能の評価に重要な一酸化窒素(NO)検出を可能とする電気化学デバイスの開発を進める。 ROSの測定においては、過酸化水素存在下で電位印加により発光するルミノール誘導体を用いて、電気化学発光による測定システムを構築する。NOの検出においては還元型グラフェンオキサイド(rGO)を基材とした触媒を利用し、NO検出の感度・特異性を向上させたデバイスを検討中である。これらの検出系において、がん細胞や血管内皮細胞の共培養系の腫瘍モデルの評価を行っていく。
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Research Products
(16 results)