2021 Fiscal Year Annual Research Report
近代中国における日本ジャーナリズムの受容-越境する「新聞学」から見る国際的公共圏
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20J21422
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
陶 一然 広島大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 新聞学 / ジャーナリズム / 同盟通信社 / ジャーナリスト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本が中国「新聞学」(新聞紙や新聞事業に関する理念や専門知識)の展開に与えた影響を考察する。かつて、日中両国の間に「知の回廊」が存在しており、日本で形成された「新聞学」の学知はその回廊を通して中国に流入した。本研究は日本「新聞学」はいかに中国に流入したのか、その社会背景とそれにかかわっていた人物や組織に注目している。 本年度は、日中戦争期の中国における日本新聞学の展開に関する考察を行った。研究対象は戦時中の北京に存在していたジャーナリスト育成機関―「中華新聞学院」である。戦前の中国では、日本で出版された「新聞学」の著書をモデルにした「新聞学」の著書が多く出版された。ほとんどの著者は日本に留学した中国人留学生である。日本「新聞学」の学知は中国人によって選択され、中国に渡った。日中戦争期に入ると、状況は一変した。戦争に乗じて日本の新聞業界が中国に積極的に進出し、日本「新聞学」の学知は日本人の手によって、中国に渡るようになった。「中華新聞学院」の創設は象徴的な出来事である。 「中華新聞学院」は同盟通信社の関係者である佐々木健児によって創設された中国人向けのジャーナリスト育成機関である。日本で出版された「新聞学」の著書が中国語に翻訳され、教科書として使われていた。戦時中、多くの中国人が「中華新聞学院」で学び、日本「新聞学」の学知の影響を受けたと考えられる。「中華新聞学院」の教育の中で、日本「新聞学」の学知はどのように運用されたのか。本研究は「中華新聞学院」にかかわっていた人物(講師陣や学生)とそこで使われていた教科書を分析し、その疑問を明らかにした。研究成果の一部は2021年6月開催の中四国歴史学地理学協会の部会で報告した。「中華新聞学院」に関する研究の成果は『東洋学報』に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は今までの二年間は主に二つの方向から研究を展開していた。コロナの影響で史料収集や学会発表のスケジュールがやや遅れているが、順調に進んでいる。これからはさらに二つの方向を加えて、研究を完成するつもりである。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は今までの成果を積極的に投稿し、各学会、研究会で報告する予定である。2021年度で概ね完成している「日中戦争期の中国における日本新聞学の展開」を投稿し、2021年度購入した『総合ジャーナリズム講座』や新聞学院『学報』などの史料を運用し、新しい方向から研究を展開する予定である。
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Research Products
(2 results)