2020 Fiscal Year Annual Research Report
ミューオンg-2精密測定に向けた高品質ミューオンビーム入射技術の確立
Project/Area Number |
20J21440
|
Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
中沢 雄河 茨城大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
|
Keywords | ミューオン / IH-DTL / 線形加速器 |
Outline of Annual Research Achievements |
J-PARCでは、実験値と予測値に3σ以上の乖離が報告されているミューオン異常磁気能率(g-2)の0.1 ppm精度の測定とミューオン電気双極子能率(EDM)の10-21 e・cmオーダーでの探索のためのミューオンg-2/EDM精密測定実験を推進している。先行実験で問題となったビーム由来の系統誤差を抑制するためには、空間的・エネルギー的な広がり(エミッタンス)が極めて小さなミューオンビームの生成が要求され、そのためには前例のないミューオン線形加速器の開発が必要不可欠である。そこで本研究では、低速部領域を担うInter-digital H-mode drift tube linac (IH-DTL)の開発を進めている。 今年度は、次の2項目を中心に研究した。 (1)IH-DTLプロトタイプ空洞の大電力試験の準備:ミューオン専用に設計したIH-DTLのモデルケースは過去に例を見ず、運用例も無い。そこで、空洞の性能評価と運用試験として、実際に高周波電力を投入する大電力試験の準備を推進した。高周波源から空洞に高周波電力を伝送するための立体回路等を設計し、装置を揃えた。さらに電力投入時の空洞内の放電及び発熱のシミュレーションを行い、空洞の安定性が要求を十分満たすことを確かめた。 (2)IH-DTL実機空洞の詳細設計:プロトタイプ空洞による空洞性能評価により、要求される精度を満たすことが確認できたので、IH-DTL実機空洞の開発にも着手し、空洞の工学設計を完了させた。エミッタンス増大の原因となる製作誤差及び熱膨張に起因する電場誤差を抑制するために、打ち切り特異値分解を応用した電場補正手法を考案し、エミッタンス増大を10%以内に抑制できることを評価した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IH-DTLプロトタイプの大電力試験に向けて、必要装置の準備とシミュレーションによる試験の見積もりを行なった。装置の一部の開発が当初の予定に比べ若干遅れたが、今年度で準備は概ね完了したので、来年度に大電力試験を実施する目処が立っている。 また、IH-DTL実機の工学的な詳細な設計、及びビームダイナミクスの数値的解析を行い、実験要求を満たす空洞性能が得られることを評価した。得られた成果は国内学会等にて発表した。製作に関する打ち合わせを着手しており、来年度には製作する予定を立てている。 以上から、本研究は概ね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
IH-DTLプロトタイプに関しては、大電力試験のための各装置の準備が完了しているので、実験環境を整備次第、大電力試験を実施する。IH-DTL実機開発のためには、熱特性・放電現象・線量発生などのさまざまな特性を事前に理解しておくことが重要であるので、プロトタイプでの大電力試験結果とシミュレーション結果を比較し、IH-DTLの開発手法の有用性を証明する。得られた成果は学術論文として報告する。 IH-DTL実機に関しては、製作が完了次第、低電力測定を実施し、空洞の性能を評価する。さらにプロトタイプ空洞開発で得られた知見を反映することで、精度の高い開発が実現すると期待される。
|
Research Products
(4 results)