2021 Fiscal Year Annual Research Report
The mechanism for the establishment of dominant party systems in Georgia
Project/Area Number |
20J21475
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古澤 卓也 東京大学, 法学政治学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
|
Keywords | ジョージア / 権威主義 / 与党 / シェワルナゼ / ジョージアの夢 / ゲーム理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度前半はジョージア市民連合崩壊後の旧体制エリートがサアカシュヴィリ体制で果たした役割を分析した。サアカシュヴィリは当初、旧体制との断絶を掲げて政権を獲得したサアカシュヴィリだったが、大統領任期の後半ではソ連時代やシェワルナゼ時代の政治・経済エリートを与党候補者として立候補させていることが分かった。これはシェワルナゼ政権下のエリートがサアカシュヴィリ時代も一定の影響力を保持していたことを暗示している。この研究を2021年8月にオンラインで行われたInternational Council for Central and East European Studiesで発表した。 後半はカリフォルニア大学バークレー校に客員研究員として滞在し、主にゲーム理論の手法を学びつつ、権威主義的指導者が与党を形成する条件に関する理論を形成した。既存の権威主義研究は、ある種の権威主義与党が体制の持続を助けることを指摘してきた一方で、多くの権威主義与党が短期間で分裂してしまうことを指摘してきた。なぜ一部の独裁者は、コストやリスクを払ってでも脆弱な与党を形成するのか?こうした問題にゲーム理論で答えることを試みた。本モデルによれば、与党が形成されやすいのは、体制が集権的・抑圧的で、なおかつエリートが指導者に比べて強すぎず弱すぎないときである。こうした条件下で、指導者はエリートを政治体制に参加させるために、政党を通じてエリートを強化しようとする。この条件はジョージア市民連合形成時に当てはまる。しかし本モデルは、こうした政党は必ずしも長続きしないことも示唆している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の前半にはジョージアで現地調査を行う予定だったが、新型コロナウィルスの影響で延期となり、研究計画に大きな遅れが生じている。現地調査は全て来年以降に回す予定である。 他方で理論研究を前倒しし、一定の進捗を得ることができたことは大きな成果である。本研究は、独立した論文として発表する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
上述のゲーム理論研究を論文にまとめ、投稿する。 夏からジョージアで現地調査を行う予定である。まずは首都のトビリシで全国レベルの政治エリートの動向を調査する。今年度前半の研究によって、ソ連時代やシェワルナゼ体制下の政治経済エリートがサアカシュヴィリ時代にも影響力を保ち、新体制に参画していたことが分かったが、サアカシュヴィリはいかにして彼らを体制内に取り込んだのか?また、旧来のエリートたちはサアカシュヴィリ時代の末期にどのようにふるまったのか?(サアカシュヴィリ陣営にとどまったのか、有力野党に鞍替えしたのか?)こうした点を、当事者へのインタビューによって明らかにしたい。 また、今日の与党である「ジョージアの夢」体制研究に着手する。目下最大の問題は、この党の性格と、それに関連した今日のジョージア政治全体に対する評価である。従来ジョージアの夢は創設者ビジナ・イヴァニシュヴィリの個人政党と見なされることが多かった。すなわち、党自体が権力を握っているのではなく、イヴァニシュヴィリが政党を利用してジョージア政治を支配しているとみなされてきたのである。しかし昨年イヴァニシュヴィリが政界を去り、彼が党に対する権力を失ったという見方も現れている。仮にこれが正しいなら、ジョージアは特定個人というよりも政党によって集団的に支配される体制に移行したのかもしれない。まずは政治エリートや現地専門家へのインタビューによって、この点を明らかにする。 滞在の後半では地方に向かい、歴代の与党がいかにして党組織を形成し、集票を行っていたのかを明らかにする予定である。
|