2020 Fiscal Year Annual Research Report
次世代ガンマ線望遠鏡CTAを用いた系内宇宙線加速起源の解明
Project/Area Number |
20J21480
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡 知彦 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 望遠鏡開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙線は発見から1世紀経った今なお、その放射起源は未解明である。中でも1 PeV(= 10の15乗電子ボルト)までは銀 河系内で生成されると考えられているが観測的証拠は未だない。当研究では、その陽子から原子核反応を経て、2次的に放射されるガンマ線を観測することで、そのPeV陽子加速天体を特定することが目標になる。 その有力候補である超新星残骸SNR G106.3+2.7に対して、現行のMAGICガンマ線望遠鏡の観測結果を論文 としてまとめ、学術雑誌への投稿間近まで来ている。さらに、同天体に対し、100 TeVまで感度よく観測可能にする大天頂角観測という手法を適応する現行望遠鏡の観測提案を提出し、採択された。現在、当観測提案によるデータ取得が進められている。 並行して、次世代ガンマ線望遠鏡CTAの開発も進めている。スペイン現地に望遠鏡を建設予定であるが、未曾有のパンデミックの影響により望遠鏡建設サイトへの出張機会が失われた。その環境下においても、2018年10月に既に完成した大口径望遠鏡初号機の観測運用に向けて、大学の研究室からリモートにおける運用システムを構築し、既に実用に成功した。さらに、大口径望遠鏡2から4号機用の検出器回路モジュールの性能試験結果の解析、及び、エラーモジュールのデバッグを進めた。エラーモジュールに関しては、読み出し回路基板に搭載したICチップであるFPGAとアナログメモリチップの通信に使われるクロックの周期に問題があることを突き止め、FPGAのファームウェアを更新し、現在は問題なく稼働するようにした。さらに試験での取得データ解析により、アナログメモリチップの製造時期による性能の違いを発見し、今後の天体観測に向けてのより高品質なデータ解析を提供するためのデータ補正方法を開発中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、現行のガンマ線望遠鏡、および、開発中の次世代ガンマ線望遠鏡を両方用いて、これまでのTeV帯域のガンマ線観測において、世界最高感度を目指している。 現行の望遠鏡を用いた研究において、既に学術論文を用意している他、さらに、1 PeVの宇宙線が放つ100 TeVにまで渡るガンマ線スペクトルの取得を可能にする観測を提案し、採択された。 一方、現在開発を行っている次世代望遠鏡の建設、および、試験は未曾有のパンデミックの影響により遅れが出た。しかし、2018年10月に既に完成した大口径望遠鏡初号機の観測運用に向けて、大学の研究室からリモートにおける運用システムを構築し、既に実用に成功した。かつ、既に量産された建設予定である2から4号機用の検出器回路モジュールの性能試験で浮き彫りになっていた課題も解決に至り、安定して稼働するための準備が進められている。 以上より、概ね期待通りの進展があったと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
現行のガンマ線望遠鏡による観測研究においては、前述の通り、準備している論文を学術雑誌に投稿する。かつ、観測提案が採択され、観測が行われいる天体のデータの解析に着手する。解析の詳細は提案書に記載した通りに行う。 また、次世代望遠鏡の初号機の運用に関して、昨年度に引き続き、観測シフトを行い、望遠鏡の較正試験、および、科学観測を行う。 これで得られたデータの解析も並行して行う予定である。 かつ、次世代望遠鏡2から4号機の開発に関して、大学からの海外出張への規制が解除され次第、望遠鏡サイトのあるスペインに送られた検出器モジュールの性能試験を完了させる。
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