2021 Fiscal Year Annual Research Report
次世代ガンマ線望遠鏡CTAを用いた系内宇宙線加速起源の解明
Project/Area Number |
20J21480
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡 知彦 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 宇宙線 / 超新星残骸 / ガンマ線 |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙線は発見から1世紀経った今なお、その放射起源は未解明である。中でも1 PeV(= 10の15乗電子ボルト)までは銀河系内で生成されると考えられているが観測的証拠は未だない。当研究では、その陽子から原子核反応を経て2次的に放射されるガンマ線を観測することで、そのPeV陽子加速天体を特定することが目標になる。 その有力候補である超新星残骸SNR G106.3+2.7に対して、現行のMAGICガンマ線望遠鏡の観測結果を国際学会第37回宇宙線国際会議等にて報告した。現在は学術論文として準備中である。 また、Fermi-LATガンマ線天文衛星による超新星残骸HB9の観測データを解析し、超新星残骸の過去の粒子分布を反映する分子雲ガスからのガンマ線放射と、現在の粒子分布を反映する残骸の殻からのガンマ線放射の両方を検出することに成功した。その結果、単一の超新星残骸における宇宙線の加速エネルギーの時間発展を測定できる可能性を見出し、現在よりも過去の若い衝撃波の方が高いエネルギーを生み出していたことを明らかにした。その結果は学術論文としてまとめ、日本天文学会刊行の欧文研究報告誌に採択されている。 並行して、次世代ガンマ線望遠鏡CTAの開発も進めている。2024年に建設予定である大口径望遠鏡2から4号機用の焦点面検出器回路モジュールの組み立て、および、必要な約800モジュールにおける性能評価試験を完了させた。現在は、スペイン本土にて製造されたカメラ筐体への挿入が行われている。さらに試験での取得データ解析から、読み出したデータに現れる偽パルス現象の特性について調べ上げ、望遠鏡観測に与うる影響について議論した。その結果は、日本物理学会第77回年次大会にて報告している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現行のMAGIC望遠鏡の観測データから得られた超新星残骸G106.3+2.7の解析結果は、1 PeV(= 10の15乗電子ボルト)までの陽子を生成する超新星残骸として非常に有力であることを示した。ただ、理論的に超新星残骸の加速エネルギーはその天体の年齢と反相関すると考えられており、この超新星残骸はそこまで加速効率が良くないと思われる中年の天体である。そこで新たに、超新星残骸の最大加速エネルギーの経年変化を単一の超新星残骸で測定するという手法を考え、他の超新星残骸HB9に適応した。その結果、その期待された経年変化率で説明できることがわかった。まだ統計不足で強い主張にはなっていないが、現在開発中であるCTA望遠鏡により明らかにできることが期待されることが推定できた。 CTA計画に関し、特に大口径望遠鏡の開発はパンデミックの影響により遅れが生じたが現在は順調に進んでいる。北半球の観測サイトにはその大口径望遠鏡残り3台建設する予定であり、昨年度時点で、既に残り3台分に必要な焦点面カメラモジュールの組み立て、基礎評価項目の測定が概ね完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
超新星残骸G106.3+2.7における1 PeVまでの粒子加速をより強固に主張するため、MAGIC望遠鏡による大天頂角観測法を当天体に初めて適応し観測をおこなっている。観測地で火山が起き観測が一時期止まってしまうというトラブルもあったが、現在は通常観測を行えるようになった。既に一部のデータは撮れているので、解析を随時行っていく。 また、単一の超新星残骸における粒子加速の時間発展測定について、他の天体にも適応すべく、新たな超新星残骸データの解析に着手している。この結果が得られれば、系統的に超新星残骸の時間発展について議論ができるようになることが期待される。 CTA計画に関しても、大口径望遠鏡の焦点面カメラ筐体へのインストールを完了し、統括試験が行われる予定である。試験結果が取得されれば、随時性能が規定値に達しているか確認し、問題あればデバッグ作業に取り掛かる。 また本年度が博士課程最終年度になるため、博士論文の執筆を行う。
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Research Products
(3 results)