2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Electromagnetic Induction Method Applicable for Detecting Weak Adhesive Bonds in CFRP
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20J21500
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
松永 航 東京工業大学, 工学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | CFRP / 接着接合 / ウィークボンド / 非破壊検査 / 電磁誘導試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
炭素繊維強化樹脂 (CFRP)接着接合部に生じるウィークボンドを検出可能な電磁誘導試験 (EIT)を開発するために,本年度は実験により研究を進めた. まず,前年度までに解析を用いて検討した実験条件,コイルの形状,コイルの配置を実装し,CFRPにより誘電率の異なる誘電体を挟み込んだCFRP接着接合部模擬試験片を用いて実験を行った.本実験の目的は,CFRPに挟まれた誘電体の誘電率測定に対してEITの適用可能性を検討することであり,実際のCFRP接着接合継手を適用するとコストが大きくなるためである.実験では,厚さの異なるCFRPを用いることで,提案手法の適用範囲を検討した.実験結果より,CFRPの厚さが5 mmを超えてもCFRPに挟まれた誘電体の誘電率を測定可能であることが分かった.実際のCFRP接着接合継手に用いられているCFRPの厚さは大きく見積もっても3 mm程度であることから,提案手法のCFRPに挟まれた誘電体の誘電率測定に対する有効性を示した. 次に,実際のCFRP接着接合継手の吸湿試験を行い,試験片を吸湿させることでCFRP接着接合継手中に簡易的ではあるがウィークボンドを作製し,提案手法を用いてウィークボンドの検出を行った.本実験の目的は,CFRP接着接合部品の製造時及び製造中において問題となっている吸湿により生じたウィークボンドの検出に対するEITの有効性を検討することである.実験結果より,提案手法を用いることでCFRP接着接合継手の吸湿率を測定可能であることを示した.一方で,本結果には,CFRPの吸湿の影響も含まれており,実際に測定を意図している接着剤の吸湿と区別する必要がある.この方法については,今後の研究により検討していくものとする.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までの研究の進捗状況において,本研究課題を設定するにあたり作製した研究実施計画と比較してやや遅れている. 現状の遅れ具合を検討するために,研究実施計画と現在の状況の比較を行う.研究実施計画では,R02年中に実験及び解析を用いることでCFRP接着接合部模擬試験片を用いた提案手法の有効性を検討し,R03年中に接着剤の吸湿および硬化不良により発生するウィークボンドの検出を予定していた.一方,現状では,R02年中は解析による実験条件,コイルの形状,コイルの配置等の検討を行い,R03年中にCFRP接着接合部模擬試験片を用いた提案手法の有効性を検討し,また,接着剤の吸湿により生じたウィークボンドの検出を行った.以上から,R03年中に行う予定であった接着剤の硬化不良により生じたウィークボンドの検出が現状実施できておらず,これにより,研究実施計画と比較してやや遅れていると判断した. 以上のような研究の遅れが発生してしまった理由として,新型コロナウイルスの感染拡大に伴う大学への入校禁止及び制限の影響が大きかったと判断している.研究実施計画上,R02年で特別研究員として採用される前に,解析を用いることで実験条件の検討を行い,R02年で特別研究員として採用された後に,実験を用いることで解析で検討した実験条件の有効性について検討する予定だった.しかし,R02年中は,特に大学の入校制限が厳しく,これにより,実験ではなく解析を中心に研究を進めることとなった.これにより,当初予定していた計画よりもやや遅れが発生していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策として,CFRP接着接合継手を吸湿させることで取得した吸湿率と提案手法の出力の関係について,解析を用いて材料中で生じている物理現象について考察を行う予定である. 吸湿したCFRP接着接合継手に対して提案手法を適用することで,吸湿率が増大するほど提案手法の出力も増大するという結果が得られているが,提案手法の出力が増大する原因について切り分ける必要がある.CFRP接着接合継手は,2枚のCFRPと接着剤から構成されているため,CFRP接着接合継手が吸湿するということは2枚のCFRPと接着剤が吸湿するということである.CFRPは吸湿することでCFRP中の炭素繊維の位置が僅かに変化することで導電率がが変化し,CFRP中の樹脂も吸湿により誘電率が変化する.また,接着剤は吸湿することで誘電率が変化する.さらに,CFRP及び接着剤は吸湿により厚さが変化し,試験体の厚さが変化することで提案手法の出力が変化することが分かっている.一方で,CFRP接着接合継手の接着接合部に,吸湿により生じるウィークボンドを検出するためには接着剤の誘電率変化を取得する必要がある.このため,CFRP接着接合継手に対して提案手法を適用することにより取得した出力に対して,接着剤の誘電率変化に伴う出力の変化が占める割合を検討する必要がある. 以上の検討を解析で行う.CFRP接着接合継手をモデリングし,CFRPの導電率,誘電率を変化,接着剤の誘電率を変化,CFRP及び接着剤の厚さを変化させて解析を行うことで,それぞれのパラメータが提案手法の出力に対して与える影響について評価する.これにより,吸湿したCFRP接着接合継手に対してEITを適用した場合に生じている物理現象を明らかにする.
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