2020 Fiscal Year Annual Research Report
Quantitative electric field observation at high spatial resolution by differential phase contrast STEM
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20J21517
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠山 慧子 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 走査透過電子顕微鏡 / 電磁場観察 / 位相イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
走査透過電子顕微鏡(STEM)は細く絞った電子線を試料上で走査し,透過した電子を検出することで試料内部構造を高い空間分解能で得る手法である.STEMでは通常,広角に散乱された電子を環状型の検出器で検出することで試料の原子構造を得る結像手法が用いられる.一方,特に微細化が著しい現代のデバイスでは,原子構造だけでなく,局所領域に存在する電磁場やそれに伴うキャリアが大きな役割を果たしている.よってそのような微細な場を可視化,定量化できればデバイス性能向上に非常に有用であると考えられる.近年,STEMの明視野に特殊な検出器を導入することで試料内部電磁場による透過電子の偏向を捉え,局所電磁場を可視化する微分位相コントラスト(DPC)STEMと呼ばれる手法が上記の目的を達し得るとして大きな注目を集めている.そこで本研究ではDPC STEMを材料解析に応用して内部電磁場,キャリアを観察し,電磁場,キャリアの材料特性への影響を明らかにすることを目的とする. 当該年度では,DPC STEM法の電磁場定量精度を向上させる手法開発を行った.DPC STEMは上記で述べたように,高分解能で電磁場観察が可能な手法であるが,電磁場の定量性については値が過小評価される問題が指摘されていた.その原因として電子線の試料非弾性散乱が考えられる.透過電子線が試料の非弾性散乱を受け,DPC STEMで検出する電子透過ディスクが不明瞭になる場合がある.この現象がDPC STEMの電磁場過小評価に寄与していると考えられる.そこで電子透過ディスクをCCDカメラを用いて実験的に取得し,それを結像時の伝達関数に組み込むことで電磁場を定量する手法を開発した.その結果,DPC STEMの定量精度を大幅に向上することに成功した.本結果は今後のデバイス開発における解析法に極めて有用であると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、電子顕微鏡を用いた局所電磁場定量観察の実験手法開発と,シミュレーションによる検証を中心に行った.本研究で行った開発手法は,局所電磁場観察の定量精度を大幅に向上させることが実験,シミュレーション双方から示されており,今後の材料解析手法として極めて有効であると言える.また,本手法を用いて実際にデバイス中に存在する電磁場,キャリアの直接観察も進めており,進捗状況としてはおおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,本年度で開発した局所電磁場定量観察手法のさらなる精度,最適化に取り組むとともに,今まで観察が難しかった,結晶に乱れが存在する系への応用を進めていく.結晶の乱れとその周辺の電磁場,キャリアは材料特性に大きな影響を及ぼすと言われており,その結果から,材料特性向上メカニズムの解明につながると期待される. 得られた知見に関しては論文投稿や学会発表など,外部報告を積極的に行う予定である.
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Research Products
(4 results)