2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20J21541
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
林 凌也 東京都立大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 経世代エピゲノム / エピジェネティクス / 父母アレル非対称性 / ヒストン修飾 / 卵子 / 初期胚発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類におけるエピゲノム遺伝機構は、ゲノムインプリンティングに代表されるように、配偶子由来のDNAメチル化が長らく研究されてきた。近年になり、母性ヒストン修飾のH3K27me3(H3リジン27番目トリメチル化)で制御されるヒストン型インプリンティングが新たに発見され、哺乳類においてヒストン修飾も次世代に伝達されることが明らかになった。ヒストン修飾はDNAメチル化に比べて環境に応じて変化しやすいことから、環境要因による卵ヒストン修飾の変異が哺乳類のエピゲノム遺伝に寄与する可能性が新たに示唆される。そこで、H3K27me3以外の代表的なヒストン修飾の次世代への伝達を検討し、H3K9me2が卵-着床前初期胚で特徴的な分布を示すことを明らかにした。微量CUT&RUN法により、卵(GV期、MII期)、着床前初期胚(受精卵、2細胞期、桑実胚、胚盤胞)と着床後胚(E6.5)のH3K9me2の分布をマッピングすることができた。データ解析の結果、GV期卵ではES細胞と類似して、遺伝子間領域、発現抑制されている遺伝子やES細胞の核ラミナ結合領域などにH3K9me2が分布し、先行研究でも報告されており、典型的な分布であると考えられる。興味深いことに、MII期卵ではH3K9me2の分布が変わり、典型的な分布に加えて遺伝子領域などにも分布が拡大していた。さらに、このMII期卵の非典型的な分布は、受精後の着床前初期胚においても引き継いでみられた。このことから、非典型的なH3K9me2の分布が卵から着床前胚に伝達されることが示唆される。また、この非典型的なH3K9me2の分布は、着床後胚のエピブラストには典型に戻る。現在、この非典型的なH3K9me2分布の機能の解析を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
微量エピゲノム解析法を用いて、卵子と初期胚発生胚のヒストン修飾をゲノムワイドに解析し、H3K9me2の分布とその次世代への継承可能性を明らかにした。また、顕微操作技術を用いて、母性H3K9me2の消失胚の作成を行い、非典型的なH3K9me2分布の機能の解析を試みている。以上から、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒスントン修飾による母性エピゲノム遺伝機構へのH3K9me2の機能について検証していく。卵-着床前初期胚で特徴的なH3K9me2の消失胚を用いて、着床前発生、胎盤形成異常など、すでにヒストン型インプリンティング破綻で知られている表現型の評価を行う。これにより、母性H3K9me2による胚発生への影響を明らかにする。
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Research Products
(2 results)