2021 Fiscal Year Annual Research Report
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20J21568
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山田 航太 慶應義塾大学, 社会学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 学習 / ドーパミン / 消去 / 習慣形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトを含めた多くの動物は様々な経験を通じて行動を変容させる。こうした能力は学習と呼ばれ、生物が外部環境に柔軟に対応し、生存していくために不可欠である。本研究では、心理学的な知識と手法に加えて、機械学習や計算理論などの技術を駆使することで、学習を支える心理学的・生物学的な基盤を明らかにすることを目的とした。 本年度は主に以下の3つの実験に従事した。1)学習における予測と予測に基づいた行動の乖離、2)消去に伴う行動変容のダイナミクス、3)習慣形成における行動の巨視的構造の役割の検討、である。 1)生物は予測とは異なる出来事に直面した時に学習をする。予測とは将来起こるであろう出来事への準備的な行動によって定義されるが、予測的な行動が生じなかった時に、それが予測の失敗なのは、あるいは単純に運動制御の失敗なのか、明確に切り分けることは難しい。本研究では、瞳孔径の変化が予測を反映することを明らかにした。さらに薬理学的操作技術を組み合わせることで、予測に伴う瞳孔径の変化とリッキングという身体運動の乖離を示した。 2)ある行動をしても望ましい結果が得られなかった時に、一時的にその行動が頻発する消去バーストと呼ばれる現象がある。この現象は従来では逸話的に報告されているものの、実験的な研究は少ない。本研究では、計算論的なモデルとシミュレーションによって、バーストの制御要因を特定し、実験的にその妥当性を検証することで、バーストがどのような環境の下で生じるか明らかにした。 3)ある行動がその結果ではなく先立つ刺激によって引き起こされるとき、その行動を習慣と呼ぶ。本実験では行動を複数の反応から構成されるネットワークとして捉えるモデルを提案した。そのモデルを用いてシミュレーションを行うことで、ネットワークの構造依存的に任意の反応が習慣となることを示し、習慣形成に関する新たな心理学的知見を提供した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では1)学習課題中の薬理操作による学習神経基盤の解明、2)習慣形成における行動の巨視的構造の役割について検討する予定であった。これらの研究は順調に進んでおり、十分なデータが得られている。 1)本研究では、学習課題中のマウスに薬理的な処置を施すことで、学習における予測と運動の乖離を明らかにした。特に本研究では行動実験と薬理操作だけではなく、画像処理を駆使することによって、当初の予想以上の結果が得られた。既にデータは十分に蓄積されており、論文化に向けて原稿を作成している段階である。 2)本研究では、行動に関する新たな理論的な枠組みを提供するだけでなく、習慣形成と呼ばれる現象を説明することに成功した。昨年度に学会発表などを経て、既に論文として書き上げており国際誌にてmajor revisionの段階である。 さらに、上記の研究に加えて学習に伴う行動の時間的な変化を検証するための、新たな実験系も立ち上げることに成功した。さらにその実験系でも、データが蓄積されつつあり、昨年度には当実験で学会も行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は主に以下の2つに従事する。1)昨年度の研究の論文化、2)新たな実験の遂行である。 1)既に昨年度までの実験はデータが十分に蓄積されており、論文化の準備ができている。そのため本年度ではそれらをフィードバックなどをもとに完成させることを目指す。 2)昨年度までに行動実験系が立ち上がっているため、薬理・オプトジェネティクスなどによる神経活動の操作を行うことで、様々な行動の神経メカニズムを検証することができる。本年度には、既に立ち上がった実験系をもとに神経科学的な技術を取り入れることで、学習や行動の神経基盤を明らかにすることを目指す。
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Research Products
(6 results)
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[Presentation] Effects of optogenetic manipulations of GABAergic neurons in the lateral septum on the performance in open-field, real-time conditioned place preference, and delay conditioning tasks in mice.2021
Author(s)
Hirakata, H., Yatagai, S., Yamada, K., Tamura, R., Nasukawa, D., Niki, Y., Ujihara, Y., & Toda, K.
Organizer
日本動物心理学会第81回大会
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