2020 Fiscal Year Annual Research Report
高機能自閉症者の音声言語理解における多感覚からのムード情報統合過程の神経基盤
Project/Area Number |
20J21604
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
直江 大河 東北大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 終助詞 / 言語産出 / 言語理解 / 語用論 / 自閉症スペクトラム障害 / 心理言語学 / 神経言語学 / fMRI |
Outline of Annual Research Achievements |
日本語母語話者の自閉スペクトラム症児が日常会話で終助詞を用いないという臨床報告はあったが、量的なデータで示した研究がまだなかった。そこで、定型発達者が終助詞を用いる場面で、自閉スペクトラム症者が同じように終助詞を用いるのかどうかを確かめるための実証データを提出する必要があった。本研究は、「よ/ね」が典型的な文脈である疑似会話場面を作り、発話文の文末を空欄にした会話完成タスクを用いた文産出実験を、成人の定型発達者および自閉スペクトラム症者対象に行った。新型コロナウイルスの影響で、実験室に人を呼んで実験を行うことが困難であったため、実施が遅れたが、Zoomを用いたオンライン調査の形を取ることで、本研究員が定型発達者のデータを取得することができた。また、自閉スペクトラム症者のデータ取得は、長谷川病院精神科の医師との共同研究によって実現することができた。実験の結果、定型発達者は先行研究が指摘した通りに終助詞を使い分けていることが示された。一方で自閉スペクトラム症者は、「ね」が典型的な文脈で「よ」を多く用いるなど、非典型的な終助詞使用が見られた。この研究によって、自閉スペクトラム症者の終助詞使用について実験による量的データを始めて示すことができた。取得したデータについて、国立国語研究所が編纂する国際論文集に英語で掲載されることが決まっており、現在執筆準備中である。 自閉スペクトラム症者と定型発達者の終助詞理解の神経基盤の違いを明らかにするfMRI実験を行う予定であったが、新型コロナウイルスの影響で実施が当初の予定からは大幅に遅れた。しかし、自閉スペクトラム症者との比較の前段階である、定型発達者を対象とした終助詞理解の神経基盤を明らかにするためのfMRI実験を、国立障害者リハビリテーションセンター研究所の高次脳機能障害研究室との共同研究で始めることができた。現在、データ取得途中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、自閉スペクトラム症者を対象としたfMRI実験を行い、定型発達者と自閉スペクトラム症者の終助詞理解の神経基盤の違いを検討する予定であったが、新型コロナウィルスの影響によって対面の脳機能実験の実施が円滑に進めることができなかった。しかし、国立障害者リハビリテーションセンターの高次脳機能障害研究室に赴いて研究生として研修を積みながら、定型発達者のfMRI実験を開始することができた。 また、対面での実験を実施できていなかった期間に、長谷川病院の精神科との共同研究を実現させ、自閉スペクトラム症と診断を受けた成人の日本語母語話者の言語産出の調査を実現させた。本調査によって得た自閉スペクトラム症者の終助詞産出状況をまとめた論文は、国立国語研究所が編纂する国際論文集に英語で発表するよう招待を受け、現在執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度に開始した定型発達者を対象としたfMRI実験について、2021年度も引き続きデータ取得を続ける予定である。定型発達者の実験データをまとめ、年度内に国際学会及び国際誌で発表することを目指している。その後、自閉スペクトラム症者を対象とした実験を実施する予定である。 2020年度に実施した自閉スペクトラム症者対象の終助詞使用の調査について、論文執筆を引き続き行う予定である。本調査はパイロット実験としての位置付けであったため、定型発達者14名、自閉スペクトラム症者8名のデータ取得にとどまったが、心理言語学実験のサンプル数としてはやや少ない。また、定型発達者と自閉スペクトラム症者の年齢や知能指数などの統制も完璧とはいえない。定型発達者および自閉スペクトラム症者の属性を統制し、直接比較を可能にした上でサンプル数をさらに増やしていけるように、現在共同研究者たちと共に準備中である。 引き続きデータ取得を続け、データ解析をした結果について、年内に国際学会及び国際誌で発表することを目指している。定型発達者対象の実験の後、自閉スペクトラム症者のMentalizingの非典型性が終助詞理解に与える影響について、神経科学的な証拠を提供するためのfMRI実験を実施できるように準備を進めている。
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