2020 Fiscal Year Annual Research Report
多重計算を用いた半導体中での水素機能に関する系統的理解
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20J21608
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
角田 直樹 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 半導体 / 酸化物 / 水素 / 点欠陥 / 第一原理計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
半導体中の水素不純物は、キャリア生成及びキャリア補償の主な原因であることが知られている。また水素を積極的に固体に取り込めば、固体燃料電池等での電荷担体として利用する事も可能である。多様な振る舞いを示す固体中水素の安定性や微視的な状態を理解するには、第一原理計算を用いたシミュレーションが有用である。本研究では、第一原理計算により、数百規模の半導体材料中の水素不純物に対して系統的な計算を行い、固体中の水素の振る舞いに関する学理の構築を目的とする。 本年度は、(1)第一原理計算の計画・実行・解析の自動化のためのプログラムの開発及び(2)水素不純物の結晶格子間位置の推薦手法の検討を中心に行った。 (1)プログラムは主にpythonコードを用いて開発した。開発した自動計算プログラムは、Linux環境下で運用し、MongoDBを用いたデータベースを試験的に構築する段階まで進んだ。また、データベースの内容に対して、直感的に解析を行う為のwebアプリケーションの開発を行い、これについて試作版の動作まで進展した。 (2)結晶中の水素の計算モデルは通常、置換型と格子間型の二つのモデルを考慮する。これらのうち、格子間型のモデルについて、水素の適切な位置は一般に明らかになっていない。この問題を解決するため、不純物水素の結晶格子間位置の推薦手法の検討を進めた。具体的には、主要かつ特徴的な酸化物20種を対象に、水素が取り得る格子間位置を網羅的に計算し、安定となる位置を可能な限り求めた。次に、それら20種の母構造の情報(結晶構造・電子状態等)から、安定となる格子間位置を事前に推測する方法を模索した。結果、水素不純物の占有サイトや電子状態の傾向に関する理解が深まるとともに、今後の方針に関する有益な知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計算の計画・実行・解析の自動化のためのプログラム及び計算データベースの開発が、実際に運用できるレベルまで進んだ。また、データベースの応用の際、解析の効率化が期待されるwebアプリケーションの開発も進んだ。さらに、最終的にデータベースの質を左右する、不純物水素の結晶格子間位置の推薦手法について、酸化物20種に対して詳細な検討を行うことで、重要な知見を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた知見をもとに、水素不純物の結晶格子間位置の推薦手法の開発を進めると同時に、これに関する投稿論文の執筆を行う。 また、同手法の自動計算プログラムへの組み込み、自動計算の運用及びデータベースの構築を目指す。さらに、可能であれば、データベースを用いた応用研究にも着手する。
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