2020 Fiscal Year Annual Research Report
電流刺激下での脳波計測法並びに効果的な経頭蓋交流電流刺激法の開発
Project/Area Number |
20J21646
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
原 彰良 大阪大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 電流刺激 / 頭部電流経路 / 生体計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
当題目の到達目標である効果的な電流刺激方法の開発に向け,解決すべき課題は①頭部において電流刺激による作用が可能な部位の特定と特定部位への電流刺激手法の開発,②電流刺激下における脳活動の可視化手法の開発,③電流刺激による活動への干渉メカニズムの同定の3つである.研究実施計画を再検討したところ,可視化手法や干渉メカニズムの同定は電流が作用可能な場所にて行う必要があり,3つの課題の中でも電流刺激による作用可能部位の特定が急務であると考えた.そこで初年度である2020年度では,上記の解決すべき課題の①に当たる電流刺激が作用可能な部位の特定と特定部位への電流制御技法の開発に取り組んだ.具体的には,電流回路網をもととした頭部における頭部電流経路モデルの検討とそれを踏まえた電流刺激手法の開発に重点を起き,研究を行った. 頭部電流経路モデルの検討としては,直流(0Hz)から250Hzまでの周波数について,頭部に経頭蓋交流電気刺激を印加した際の頭部インピーダンスを計測した.その結果,絶縁体に近い性質を持つ頭蓋骨を皮膚と髄液が包むという人の頭部の構造に由来する交流負荷成分(キャパシタ成分)が存在することを計測により同定した.さらに,人の頭部に開いている孔(眼窩や外耳道など)と電極配置による相対位置から,頭部での交流負荷成分が異なることを実験により確認した.特定部位への電流制御手法の開発としては,従来行われてきた頭部における電極配置による電流制御手法では設計が困難であった頭部内での電流分布を作り出すことに成功した.具体的には,外部経路付与による電流制御手法とローレンツ力を用いた磁力と電流の干渉による電流制御手法を開発している(※特許出願準備中). これらの結果を踏まえ,今年度では,ヒトの頭部上における交流負荷成分の分布を調べるとともに,経頭蓋刺激における電流制御手法を電流経路設計として確立する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究進捗状況としては一進一退ではあったが,全体として概ね期待通り研究が進展したと考えている.当該年度では,頭部における電流経路モデルの構築を中心に取り組んだ.計画当初では,MEGをもちいた頭部電流経路の検討を実施する予定であったが,コロナの影響により実施が困難となったため,電位計測を用いた頭部電流経路計測に計画を変更し,実施した.(※MEGを用いた実験については研究施設等の状況に応じて検討する予定である.)具体的には,頭蓋骨の生理的構造から考察し,交流負荷成分(キャパシタ成分)の存在について実験を通じて実測し,それによる影響を評価した.また,その結果から頭部にある孔の部位を通る電流成分が支配的であることから,外部からの電流経路を制御するために,頭蓋骨上の孔と電極の相対位置による制御と電極間に外部経路を付与することによる制御,更には電流に対して外部干渉する手法(※特許申請準備中)を提案し,電流分布を変化させることに成功している.研究成果としては,特許申請に値する新たな電流制御手法の提案をするとともに,提案した電流刺激手法についてVSS2021にてacceptされ,5月に発表予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度では,頭部における電流経路の検証を行った.また,その結果から頭部にある孔の部位を通る電流成分が支配的であることから,外部からの電流経路を制御するために,頭蓋骨上の孔と電極の相対位置による制御と電極間に外部経路を付与することによる制御,更には電流に対して外部干渉する手法(※特許申請準備中)を提案し,電流分布を変化させることに成功している. この結果を踏まえ,頭蓋骨形状から,上下方向にも存在すると考えられる電流経路の検証を行うとともに,これまでの結果の精密化と論文化を行う.また,当該年度に提案した電流刺激方法を手法としてまとめ,その手法を用いて電流経路の設計の自由度の向上を狙う.さらに,設計可能な電流経路に基づき,適切な脳活動手法を検討し,電流と脳活動の干渉のメカニズムの解明に取り組む予定である.
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