2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20J21650
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
早川 健太郎 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 釣合経路解析 / 分岐現象 / 曲面近似 / 切り紙 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は,多自由度剛体折紙の変形メカニズムの変化の詳細な解析に関する研究を実施するとともに,曲面を剛体折紙で近似する際の近似精度向上のために,一部に切り目を導入した手法の検討とこれまでの提案手法で用いてきた近似精度の定義の見直しを行った。 剛体折紙の変形メカニズムの解析では,変形経路の分岐現象の解析を行うために,無数に存在する多自由度メカニズムの変形経路のうち,ヒンジに回転ばねを導入して外力を作用させた際の釣合経路を抽出する手法に関する研究を行った。昨年度の結果をふまえ,数値計算の収束性が低いという課題を解決するために,釣合式を直接解くことで釣合状態を得る手法からエネルギー最小化による手法に改め,剛体折紙の数理モデルであるフレームモデルに適用可能な形式で定式化を行った。新たな提案手法では昨年度の手法より安定的に解を得ることができ,より詳細に釣合経路の分岐現象の解析を行うことが可能であり,数値例題により剛体折紙に荷重をかけた際の変形経路を解析できること,釣合経路の分岐が起こる荷重が求まることを確認した。 剛体折紙による曲面近似精度向上のための研究では,剛体折紙をなす多面体の一部の辺に沿って切り目を導入した場合の形状生成法を提案した。切り目を考慮した場合に剛体折紙が平面へ展開可能であるための条件式を新たに定式化し,条件式を満たし,かつ目標曲面の近似誤差を最小化するような最適化問題を解くことで剛体折紙の形状を得る手法を提案している。目標曲面の近似誤差は,剛体折紙が曲面の見た目をよりよく反映するように,折紙と目標曲面の表面積の誤差や法線ベクトルの向きの誤差などを考慮して新たに定義した。以上により,より目標曲面に見た目が近い剛体折紙を得ることが可能であることを数値例題により示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の課題として残っていた剛体折紙の釣合経路解析における計算の収束性の低さの解決,および分岐経路解析をおおそよ実行できたことで研究計画の主要な研究課題である剛体折紙の変形メカニズムの解析と変形特性の評価手法の開発に目途が立った。基礎理論は昨年度に提案した経路解析手法と同様であるが,本年度の提案手法では釣合状態の導出において全く異なるアプローチを採ったことで課題の解決に至った。その成果をまとめた論文は国際学会誌International Journal of Solids and Structureに投稿し,現在査読中である。一方,申請時の計画にあった変形経路解析の結果を剛体折紙を応用した構造物の設計へ反映することは,解析の理論面,計算面での困難から実行には至っていないものの,本年度までに得られた知見より基礎的な手法の構築のための手がかりは得られており今後の課題とする。 変形メカニズムの解析と並ぶ課題である,剛体折紙による目標曲面の近似精度の向上に関する研究では,切り目の導入と目標曲面の幾何学的特徴量を考慮した新たな近似誤差の定義により,既往手法と比較して目標曲面に「見た目」がより近い剛体折紙の形状を生成することに成功した。以上の剛体折紙の新たな形状生成法に関する研究成果をまとめた論文を日本建築学会計画系論文集に投稿し,現在査読中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に開発した剛体折紙の釣合経路解析手法には大規模なモデルへ適用した場合に計算時間が相当かかるという課題がある。そこで,変数の縮約やモデル構成の再検討を行い計算時間の削減を試みる。変数縮約はメカニズムの拘束条件式を解くことで可能であるが,変数の物理的意味を考慮した縮約を行い,縮約後の拘束条件式の物理的意味や解析結果の解釈が容易になるように配慮することで,計算時間の短縮にとどまらない新たな知見が得られることを期待する。また,大規模なモデルでの解析を実行し,ミウラ折りなどの典型的な折線パターンや申請者らの提案手法により得られた折線パターンの変形特性を明らかにする。 一方,申請時の研究計画にある剛体折紙の変形特性,変形経路を反映した形状生成は困難であることが予想されるため,剛体折紙を構造物として使用する際に重要であるメカニズムの安定性の実現などに対象を絞って研究を行う。例として,施工時には剛体折り動作によって変形し,使用時には変形しないための支持条件の決定手法の提案などを試みる。 また,提案手法により得られた折線パターンを用いた模型を3Dプリンタ等を用いて作成することで,実際の挙動の確認を行い,提案手法の妥当性を検証する。
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