2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20J21655
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
呉 佩遙 東北大学, 国際文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 宗教概念 / 信仰言説 / 仏教改良 / 島地黙雷 / 人格論 / 姉崎正治 / 新仏教運動 / 心理主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
採用2年目にあたる2021年度では、1.「宗教」と「科学」の交渉から生じた迷信論、2. 仏教改良論の広がりと信仰言説、3. 真俗二諦の再解釈と「信」、4. 近代仏教史研究における「信仰」の位置付け、5. 人格論における釈迦像の再構築、6. 初期宗教学と「信仰」という新たなテーマに取り組んだ。 1については、「迷信」の創出とそれにともなう「経典」の再解釈を検討し、「迷信と信仰のはざま」(『宗教研究』96巻1輯)を執筆した。2については、「仏教改良」の語り方とそこから生み出された信仰論を考察し、学会発表「明治中期における仏教改良の潮流と「信仰」」(第29回日本近代仏教史研究会研究大会)及び「「仏教改良」の語り方」(『宗教哲学研究』39号)をおこなった。3については、明治初期における政教関係の形成に大きな役割を果たした島地黙雷に焦点を当て「啓蒙の時代における「信」」(『学際日本研究』2号)を執筆した。4については、「信仰」の視角からこれまでの近代仏教史研究を振り返り、学会発表「近代日本仏教史における「信仰」の位相」(「宗教と社会」学会第29回学術大会)と“A interpretacao do conceito de 'fe' no Japao Meiji: Budismo, Historia e Modernidade”(Revista Jesus Historico vol.26、ポルトガル語に翻訳)を執筆した。5については、人格論の枠組みにおける釈迦の語り直しを考察し、招待講演「近代日本における「人格論」の諸相」(国際シンポジウム「近代化は仏教をどう変えたのか」)及び「近代日本の釈迦論における「人格」の位相」(『東アジア仏教学術論集』10号)をおこなった。6については、日本宗教学の祖とされる姉崎正治の『宗教学概論』に焦点を当て、学会発表「初期宗教学における「信仰」と「儀礼」の交錯」(日本宗教学会第79回学術大会)と“The Discourse on Belief and Practice in Japan”(2nd International PhD Student Symposium)をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度、申請者は昨年度までの研究をさらに展開させ、新たな課題にも積極的に取り組んでいる。新型コロナの蔓延状況が続いているにもかかわらず、論文投稿や学会発表をおこない多くの成果をあげげることができた。以上の理由により、「おおむね順調に進展している」と評価した次第である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、昨年度の成果の論文化に努めるとともに、積極的に学会や研究会に参加することで先達たちからのご意見を仰ぎながら、報告と投稿を通して成果公開に努める。具体的には、1.仏教とキリスト教の対話という課題に取り組み、その一側面である新仏教運動とユニテリアンとの交流過程に光を当てつつ、それがどうして挫折することとなったか、佐藤実然や広井辰太郎に焦点を当ててについて考察する。そして、2.日露戦争以降に流行りはじめた「日本仏教の特色」論を扱い、「日本仏教」の特殊性を主張した村上専精、境野黄洋、前田慧雲などの人物を取り上げ、彼らの思想的営為において「信仰」がいかなる役割を果たしたかを検討する。さらに、3.人格論における釈迦像の再構築の課題をさらに掘り下げ、欧米諸国の仏教学の影響を視野に入れつつ考察を進める予定である。
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