2021 Fiscal Year Annual Research Report
フィリピンと日本の初等教育機関を通じたトランスナショナルな子どもの生活保障
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20J21668
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
本間 桃里 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 移民 / 生活保障 / 教育 / 福祉 / 食糧配布 / 権利擁護 / フィールド調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
第一に、社会から見えなくさせられている移民背景がある人々との深い関わりから、当該研究のテーマである生活保障について重要な示唆を得た。2020年度から継続している食糧配布や権利擁護の活動を通じて信頼関係を築くことで、アカデミアで十分に議論されてこなかった、人身売買の被害者であるにもかかわらず入管制度のもとでは加害者にされてしまう人々や、不就学が合理化されてしまう子どもたちのリアリティなどを把握することができた。明らかになった複雑な現実から社会学的理論を捉え直す契機になった。成果の一部は2021年9月に京都大学が主催した14th Next Generation Global Workshop での発表および報告論文や、移住連・移住者と連帯する全国ネットワーク刊行の『Mネット』(2022年4月号)に掲載している。なお、この成果はNPOフードバンクや地域コミュニティを含む様々なアクターの協力があってこそのものである。 第二に、学校でのフィールド調査を通じてもデータを収集することができた。公立小学校に加えて、2021年度からは新たに公立夜間中学校や、公教育を受けることが難しい環境にあるフィリピンルーツの子どもたちを受け入れている非正規の学校でボランティアとして関わりフィールド調査を開始した。また、多様な生徒の受け皿となっており、近年は移民背景がある生徒の在籍が増加傾向にある定時制高校についても調査を進めている。パンデミックの影響で、日比の初等教育機関の比較というアプローチは変更せざるをえなかったものの、このように日本国内の異なるフィールドを検討することで、移民背景がある子どもたちにとっての生活保障を多面的に分析することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パンデミックの影響によりフィリピンの初等教育機関でのフィールド調査は断念した。また、国内の初等教育機関でも外部の受入れを中断していた時期があることから、計画通りのフィールド調査は実施できなかった。しかし、食糧配布を通じた聞き取りや多様な学校でのフィールド調査を通じて、本研究のテーマである生活保障について異なる角度から検討することが可能になったことから、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
食糧配布を通じた聞き取りや学校でのフィールド調査を継続しつつ、本研究課題の最終年度となる2022年度は、研究成果のアウトプットに注力する。学会発表や論文執筆に加えて、現場や地域での発信にも努めたい。
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